「いじめ対策」

 ぼくらの教室に転校生がやってきた。
「転校生だからといって、バカにしたら、しょうちしないぞ!」
 みせんにしわを寄せ、教室をなめるようににらみ、すごんでしゃべる彼。ぼくらは、口にこそださないが、いやだなあ、と思った。
 彼は、やはり、いじめっ子だった。
 ぼくらは、自分たちでいうのもなんだけど、いじめもしなければ、いじめられもしない、ふつうの子が集まった教室だった。
 いじめっ子のなにげない言葉、なにげない行動が、ぼくらの心を、トゲでチクリ、チクリと、つっつき、イライラさせた。
 最初のぎせい者は、まじめな山田だった。
 班長だった山田が、そうじのとき、さぼっている彼を、オドオドと注意したのだ。
「なに、おれに、そうじをしろだっと!」
 いきなり、天井の「いじめ探知機」がジリジリと鳴りだした。その音をききつけて、教師たちがすっとんできて、あっという間に、山田をつれ去ってしまった。
 一昔前、「いじめ」が社会問題になったとき、政府がその対策に作ったのがこの「いじめ探知機」。とびかう声の中に「いじめ被害」の信号が含まれていると、作動するしかけになっている。
 三日後、山田は「いじめに負けない子」になって、教室へもどってきた。うわさでは、特別な薬をのまされて、特別な授業を受けさせられるのだそうだ。
 二人めのぎせい者は、小宮さんだった。副学級委員長の彼女は、勉強がおくれている彼に、親切に教えていたのだが、つい、
「いままで、なにを勉強してきたの!?」
といってしまったのだ。そしたら、彼は、
「なんだと!」
と、小宮さんをひっぱたいた。
 彼女は、あっという間に、教師につれさられてしまった。生まれてはじめて他人にたたかれた彼女はショックで泣きじゃくっていた。
 その日の放課後、ぼくらは、赤さびだらけの校庭のジャングルジムにのぼって、これからのことを相談しあった。ここしか、「いじめ探知機」のないところはないからだ。
 これ以上、ぎせい者をださないために、ぼくらは、彼をジャングルジムに呼び出し、
「たのむから、どこかへ、転校してくれないかな」
と、たのんだ。いのるような気持ちだった。
「転校生だから、おれを仲間はずれにしようというんだな。わかったよ。いなくなってやるよ」
 ぼくらは、仲間はずれにしようというのではない。これ以上、ぎせい者をだしたくなかっただけだった。なのに……。
 彼は、その足で校舎の屋上にゆき、飛び下りてしまった。そして数時間後、ぼくらは、警察官によって、つかまってしまった。




     *  *  *      *  *  *
 いじめ対策本部の建物の一室。
 政治家、教育学者、心理学者、ロボット学者らが集まり、なにやら、相談をしていた。
「いじめっ子ロボットの効果はいかがですか」
「いやあ、すごいものです。こんな短時間で、教室の生徒の中から、いじめっ子の可能性のある子と、集団でいじめをする可能性のある子とを、見つけ出してくれるとは、思いもしませんでした」
「これで、いじめ対策が一歩進みますね」
「でも、最後のあれは、ちょっとやりすぎではないですか?」
「心理学的に、罪の意識を持たせるのが、人間をおとなしくさせる近道なのです」
「わが国の教育方針をお忘れですか。わが国の繁栄のため、管理になれている大人、命令に素直にしたがう大人、そんな大人に子供を育ってることこそ、わが国の教育方針なのです。自分たちの考えで行動しようなんて、間違えなのです。」
「……」
「ということで、このロボットを全国の学校に導入したいと思いますが、いかがでしょうか?」
 全員が手を上げた。              (おわり)
        学研「読み物特集」に掲載したものに一分加筆しました。

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by spanky2011th | 2011-07-05 17:50 | 童話 私の短編