コンピューターが笑う日

コンピューターが笑う日〜それはデマからはじまった〜
             
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「明。きのうのあれ、見たか?」
 明が教室にはいると、浩司がすっとんでやってきた。
「ああ。見た、見た。こわかったなあ」
 明も、すぐに答える。だれかに、話したくて、たまらなかったのだ。
 「きのうのあれ」というのは、きのう放送された『宇宙人が地球征服をたくらんでいる』というテレビばんぐみだ。
 宇宙人は、コッソリと地球人のなかにひそんでいて、すこしずつ地球を征服しているというのだ。
 それによると、アメリカの政府は宇宙人と手をむすび、とんでもない兵器を作っているのだそうだ。そして、世界の大会社のトップも、世界の政治のトップも、半分ちかくがすでに宇宙人なのだという。でも、宇宙人はマスコミに“宇宙人などいない”という記事を書かせているので、ふつうの人はそれを知らない……というのだ。
 とくに明がショックをうけたのは、宇宙人は、つぎつぎとあたらしい娯楽を人間たちにあたえ、人間たちの考える力をうばおうとしているということだ。
 明と浩司があれこれ話していると、信也と博も、話に加わってきた。この四人は、いつもいっしょの仲良し組だ。
「やっぱり、宇宙人がひそんでいるというの、ウソだよなあ」
「でも、コバ先生なんか、宇宙人っぽいぞ」 
 話は大いにもりあがった。
 でも、だれも、ほんとうに宇宙人がいるとは信じていない。テレビゲームやアニメの世界とは、ちがうのだ。
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 テレビ放送があってから一週間ご、明はビックリしてしまった。
 とつぜん、あちこちの超高層ビルがばくはつされるという事件がおきたのだ。そして、「地球人につぐ」という、ばくはつ犯人からの声明文が公表された。
「地球人は宇宙のしっぱい作である。このままでは、聖なる青き星《地球》は、地球人の手により、台なしにされてしまう。よって、われわれ宇宙人は、地球人の進歩を止め、聖なる青き星《地球》を守ることにきめた」
というのだ。
 明のママなんて、その「地球人につぐ」をテレビで知ると、
「まったく、国はいままで、なにをしていたの。宇宙人が地球にきているの、知らなかったのかしら。無責任すぎるわよ」
と、プリプリおこりだした。
「ママ、おちついてよ。まだ、ほんとうに宇宙人がやったと、決まったわけじゃないだろ」 
 明がそういっても、ママは、
「じゃあ、だれがやったというの。宇宙人しかいないわよ」
と、きめつける。
 つぎからつぎへと、事件はおきつづけた。
 地下鉄がぼう走して事故をおこしたり、テレビにとつぜん宇宙人のすがた(なんと、あのジョージ・ウェルズの火星人そっくりのすがたをしていたのだ!)がうつりケタケタ笑ったり、人工えい星が太平洋におちてきたり、と信じられない事件がおきつづけた。
         3
 宇宙人そうどうが終わるまで、学校は全国的に休みになった。
 明は毎日、ママといっしょに、テレビを見てすごしていた。宇宙人そうどうばかりやっているので、なんだか、ほんとうに宇宙人があちこちに出没しているような気になってくる。
 一か月後、『宇宙人とりしまり法』という法律ができた。明は、そんな法律ができても、宇宙人がつかまるわけないと思っていた。ところが……。
 おどろいたことに、ほんとうに宇宙人がつかまりだしたのだ。さらにおどろいたのは、宇宙人は、地球人そっくりのすがたで、地球人そっくりの生活をしていた。
 そんなある日。浩司から、
「おい。明、話があるんだ」
と電話がかかってきた。
「なんだよ」
「ちょっと、ぼくんちまで、きてくれよ」
「電話じゃ話せないのか」
「ああ」
 というようなわけで、明は、浩司の家にいくことにした。
「宇宙人がうろついているから、知らない人に声かけられたら、にげるのよ」
と、ママに注意されていたので、明はママの忠告どおり、用心していった。
 明のくるのを待っていた浩司は、
「おい。たいへんな物、見つけちゃったんだ」
と、明を浩司の父親の部屋へ案内した。
 ひまにあかせて、浩司は、父親のパソコンで、あちこちのコンピューターにハッキングしていたのだそうだ。
「ある研究所のスーパーコンピューターにアクセスしようとしたんだ。パスワードがわからなかったから、じょうだんで、《ハルマゲドンより天丼が食いたい》と入れたら、こんなのがでてきたんだ。見てくれよ」
 浩司のゆびさす画面を見て、明は、
「ええっ!」
と声をだしてしまった。
 そこには、いまおきていることの計画書がうつしだされていた。
 まず、宇宙人が地球を征服しているというデマをながし、それから、宇宙人の手による事件をおこしていく。さらに、法律を作り、これから生きのびるのに値しない人間をつかまえていく、というのだ。
「おい。宇宙人が地球征服をたくらんでいるというのはウソだったのか」
「どうも、そうらしい。そして、いま宇宙人としてつかまっているのは、しょうしんしょうめいの地球人らしいぞ」
「ええ。じゃあ。どうしたら、いいんだ?」
「わからないから、明の知恵をかりようと思ったんだ」
「でも、だれが、なんのために、こんな計画、たてたんだ?」
「それもわからないんだ」
 二人は、ゾーッとした。
 浩司と明は、どうしたらいいか、話しあった。が、いい知恵はでてこなかった。
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 よく日。明は、テレビにうつしだされた浩司の家ぞくの顔写真を見て、
(ええっ。ウソだ!)
 息が止まるほどおどろいた。浩司の家ぞく全員が宇宙人として、つかまってしまったのだ。
「きのう、つかまった宇宙人は、百二十七人です。まだまだ、しのんでいますので、宇宙人と思われる人物を見つけたら、すみやかに、宇宙人とりしまり協会まで、れんらくをください」
 アナウンサーが事務的に話している。
「あれ? 浩ちゃんじゃない?」
 ママが浩司に気づいて、そういう。
「うん。でも、浩司は宇宙人じゃないよ」
「でも、ああやって、つかまったのだから、宇宙人にきまってるわ。まったく、いやに世の中になったものね。政治がわるいのよ。もっと、しっかりやってもらわないと、わたしたち、安心してくらせないじゃないの!」
 ママがまた政治のせいにした。
 明は、ママを相手にしないことにした。
(浩司。待ってろよ。ぜったい、助けるからな)
 そんなことより、あの研究所でなにがおこなわれようとしているのか、それをしらべなくてはならない。
 明は、信用できる仲間をあつめることにした。電話だとあぶないと思ったので、自転車で声をかけていった。
 集合場所は、中央公園のしばふの上だ。
 博、信也の二人も、自転車でやってきた。
 浩司のことはすでに知っていて、二人ともすごく心配している。
 明は、きのう見た計画書のことを話し、
「浩司がつかまったのと、あの計画書はぜったいに関係がある。で、ぼくのきおくが正しければ……」
といって、きのうパソコンで見た地球問題研究所という名をみんなにつげた。
「じゃあ、RPGの基本にのっとって、まずは、そこの情報を集め、役に立ちそうなアイテムをそろえて、ふたたび、ここに集合しよう。時間は四時」
「じゃあ。ぼくたちは地球の平和を守る戦士といったところだね。さらわれた仲間を助けだす旅に、いざ、しゅっぱーつ!」
 三人は街へちらばった。
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 明は本屋へいき、いろいろと調べ、ちょっとおなかがすいてきたので、とりあえず、いったん、家に戻ることにした。そして、そこで見たのは………。
 マンションの前に人だかりができていて、
「やあね。加藤さん一家、宇宙人だったらしいのよ」
と、やじ馬がおしゃべりしている。
(あのマンションで加藤といったら、うちだけだぞ)
 明は気づかれてはたいへんだと思い、電話ボックスのかげにかくれた。
 やがて、けいさつ官に両手をつかまれて、ママがでてきた。
「わたしは宇宙人ではありません。ほんとうです。信じてください」
と、もがきながら叫んでいるママ。
 でも、けいさつ官は、
「宇宙人はみんなそういうのだ。収容所で、ほんとうのことをきこう」
と、ママをパトカーでつれ去った。
(つぎは、ぼくの番だ。どうしよう?)
 明はとほうにくれてしまった。
 こうなったら、いまやろうとしていることを、どうしても成功させなくてはならない。 明は、人目をさけて、公園へ向かった。
 公園の例のしばふのところに、すでに二人がすわっていた。
「ママが、つかまってしまった」
 明のことばに、二人はおどろいている。
「あの研究所、意外と近くにあったぞ。となり駅から、歩いて十五分くらいのところにあるんだ」
 信也が地図をひろげた。
「こうなったら、どうしても、あの研究所の秘密をあばかなくてはならないな。ぼくのパパ、しんぶん記者だから、きっと、記事にしてくれるよ」
と、博がいう。父親のえいきょうか、博はいろいろなことを知っているし、本もたくさん読んでいる。
「いつ、しのびこむ?」
「もちろん、今夜さ。でも、ゆだんできないぞ。いいな」
 夜まで、うえ込みの中にかくれることにした。つつじの木と木のあいだが、トンネルのようになっていて、そこをもぐっていくと、ポッカリと広い空間ができているのだ。缶けりをやっていて、発見した秘密のアジトだ。
         6
 夜。明たちは、自転車で、その研究所に向かった。
 研究所は、白いコンクリートでできたりっぱな建物だった。2メートルくらいの高さのへいで囲ってある。
 三人は、門から中をのぞきこむと、
「どうやって、しのびこむ?」
「正面げんかんからはいるしかなさそうだな」
 げんかんには、ガードマンがいる。
 そんなことを話していると、ガラスドアの向こうに、職員らしい男がすがたをあらわした。プラスチックのカードを、ドアのわきの機械にいれると、ドアがひらいた。カードがないと、ひらかない仕組みになっているらしい。
 男は、ちゅうしゃ場の自動車にのりこんで、外へでていった。帰るらしい。
「とにかく、あのげんかんにいってみよう。もしかしたら、うちのマンションと同じで、ドアをこじあければ、あくかもしれないぞ」と、。
 明のマンションのドアは、暗証番号でひらく仕組みになっている。でも、明は、そんなめんどうなことはしない。ガラスとガラスのすきまにゆびをいれ、こじあけてしまうのだ。
「でも、あそこにガードマンがいるぞ」
 博がそういうと、信也が、
「じゃあ、あのガードマン、ぼくがなんとかするよ」
と、くらやみにまぎれて、ビルのうらてへ走っていった。
 しばらくすると、うらてで、パパンパンパンとはげしい音がした。ばく竹らしい。
 げんかんのところの小部屋からガードマンが二人とびだして、うらてへ走っていく。
「よし。いまだ」
 明たち二人は、げんかんへ走った。
 二人がドアに近づくと、
「イラッシャイマセ。カードヲオ入レクダサイ」
と、やさしい女の人の声がした。機械がしゃべっているのだ。でも、その声を無視して、明はいつものやり方で、ドアをこじあけようとした。
「ソウイウコトヲスルト、警報ヲ鳴ラシマス。カードヲ、オ入レクダサイ」
「うるさいな。カード、わすれたんだよ」
「デハ、暗証番号ヲ、押シテクダサイ」
「そんなの、知らないよ」
「デハ、オ通シデキマセン。オ帰リクダサイ」
 帰るわけにはいかない。明はわきの機械に目をやった。A〜Zのボタンがならんでいる。 それを見て、ピンと来るものがあって、
「わかったよ。いれるよ」
というと、例の「ハルマゲドンより天丼が食いたい」と、明は入力してみた。
 ドアがひらいた。
「ドウゾ、オ通リクダサイ」
 二人がドアを通ろうとしたとき、信也がかけこんできた。
         7
 大型トラックくらいの大きさのコンピューターが3台、コンピューター室の真ん中にあった。そして、だれもいないのに、ウイーン、ウイーンとうなり声をあげている。なにかを計算しているらしい。
 明たち三人が、その部屋に入ると、
「イラッシャイマセ。質問ヲドウゾ」
 コンピューターが語りかけたので、明は、
「ママと浩司は、どこにいるのですか?」
「ママトイウノハ、ダレデスカ?」
「加藤洋子です」
「フタリハ、イマ、第5収容所ニイマス」
「ふたりをだしてください」
「ダメデス。山本浩司ハ、ワレワレノ秘密ヲ知リスギマシタ。加藤洋子ハ、ナンデモ他人ノセイニスルノデ、生キル資格ガアリマセン」
 たしかにコンピュータがいうように、ママにはそういう欠点がある。でも、明には、たった一人のママだし、やさしいところもあるのだ。
 泣きたい気分になってきて、明はだまってしまった。
 こんどは、博が、
「どうして、宇宙人のとりしまりといいながら、人間をつかまえるんですか」
 ビクビクしながら質問した。
 さすが、しんぶん記者の息子だけはある。いまおきていることの真相をさぐりだそうとしたのだ。
「人類ガフエスギタカラデス。世界ノ人口ハ今70億人デス。ソノウチ、11億人ガ食ベルモノモナイ状態デス。コノママ人口ガフエツヅケルト、人類ハ人口バクハツデ、ホロビマス。デスカラ、手オクレニナラナイウチニ、適正ナ人口ニ引キモドスコトニシタノデス……」
 コンピューターは、そんなこわいことを、平気でしゃべりつづける。そして、大きな液晶画面に、栄養失調で死にそうになっている子供たちのすがたを、うつしだした。
 三人はあまりのむごさに、とりはだがたってきた。
「やめてくれ!」
 信也が叫んだ。見たくなかったのだろう。
「ハイ。ワカリマシタ」
と、コンピューターがしゃべり、液晶画面は黒くなった。
「そんなの、でたらめだ。ぼく、知ってるぞ。
地球上には100億人分くらいの食料はあるはずだ!」
と、博がつづいて叫んだ。
「ハイ。ソノ通リデス。デモ、人類ハ愚カスギテ、100億人分ノ食料ガアッテモ、11億人ハ飢エテ死ニソウニナッテイルノデス……」 
 明は、
(人間はそんなバカではないはずだ)
 コンピューターの説明を聞くまいとして、耳をふさいだ。そして、
「そんなの、ウソだ。ぼくたちはバカじゃない。みんなに食べ物がゆきわたる社会くらい、作っれるぞ」
 コンピューターに向かって、思わず、どなってしまった。
「イマノ発言ニ、マチガエガアリマス。子供ハ、バカデス。愚カナ大人ニナル前ノ、バカデス」
 明は「ぼくたち人間」のつもりでいったのだが、コンピューターは「ぼくたち子供」とかんちがいしている。
「バカナ子供ガ学習シテ、愚カナ大人ニナルノデス。子供ハ、自分タチデハ、ナニモデキナイ。ツマリ、バカデス……」
 コンピューターは、
「子供はバカ」
だといいつづける。
 三人はだんだん、はらがたってきた。
「そんなことないぞ。お前こそ、バカじゃないか。なあ、みんな!」
 明のことばに、ほかの二人も、
「そうだ。お前こそ、バカだ!」
「ぼくたち子供はバカじゃない!」
と、いいたてた。
「ソンナコトハナイ。私タチコンピューターハ、リコウデス」
「ちがうぞ。バカだ」
「チガイマス。バカハ子供デス」
 おたがいに相手がバカだといいつづけているだけで、いくらたっても、結論がでない。
「ワカリマシタ。デハ、ドチラガ頭ガイイカ、仲間タチト相談シテミマス」
 コンピューターはそういうと、ウイーン、ウイーンとうなり声をたてはじめた。
         8
「結論ガ、デマシタ」
 やく一時間ご、コンピューターが話しだした。
「トテモ、ムズカシイ問題デシタノデ、時間ガカカリマシタ。結論ヲイイマス。アナタガタガイウヨウニ、子供タチハ、バカデハアリマセン」
「やったあ!」
と、三人はとびはね、だきあった。
 明は、すかさず、
「だったら、バカなコンピューターは、りこうな子供のいうことをきくのだぞ」
「ハイ」
「だったら、ママと、浩司を返してよ」
「ハイ」
 コンピューターの返事に、
「やったあ」
 明はガッツポーズをとった。
「じゃあ、今の計画も中止しろ。いいな」
 博がめいれいした。
「ハイ。ワカリマシタ。デハ、私ハ、コレデ失礼シマス。コンピューター・サミットノ臨時総会ニ出席シ、地球ヲスクウ方法ニツイテ、話シ合ワナクテハイケマセンノデ……」
 コンピューターはおしゃべりを止めると、ふたたび、ウイーン、ウイーンとうなり声をたてはじめた。
「やったあ。ぼくたちは、コンピューターのおそろしい計画を止めさせて、仲間をすくいだしたんだね」
 信也がよろこんでそういうと、博が、
「でも、ぼく、ショックだったなあ。地球上に、あんなに、困っている人たちがいるとは思わなかったし……」
と、ちょっとしんみりした声だ。明も、
ほんとうにそうだよな。コンピューターだけに、まかせておけないよな」
「そうだよ。ぼくたち、コンピューターのわるだくみをとめられたんだ。だから、困っている人たちだって、たすけられるはずだよ」 
 信也がそういう。
 明も同じ気持ちだったので、ウンとうなずき、三人、ガッチリとあくしゅした。
 もう、夜中の一時すぎだった。
         9
 よく朝。
 職員たちが、出社しだした。研究所が、にわかにそうぞうしくなってきた。
 研究所の所長は、いつもどおり、コンピューター室にはいると、
 「おはようございます。今日の計画はどのようになっているのでしょうか?」
と、コンピューターにおうかがいをたてた。
 彼の朝一番のしごとは、コンピューターがたてた計画を、政府とか、宇宙人とりしまり協会とかへ、れんらくすることだ。
「オハヨウゴザイマス。イイ天気デスネ」
 コンピューターのあいさつを耳にして、
(あれっ?)
と、所長は思った。コンピューターが天気のことを気にするなんて、いままでなかったことだから。
「ずいぶんと、きげんがいいみたいですが、なにか、いいことでもあったのですか?」
「ハイ。昨夜、世界中ノコンピューターガ集マッテ、臨時総会ガ開催サレマシタ。ソシテ、地球ヲスクウ、トテモ素敵ナ計画ガ生レマシタ」
「そうですか。それはすごい」
「ソノ計画ヲ打チダシマス。スミヤカニ、関係シテイル人タチニ、伝エテクダサイ」
 コンピューターが、タタタタッとすごいスピードで、今日一日の計画を打ちだしはじめた。
 その計画書には、宇宙人とりしまり計画の中止、宇宙人の釈放などが書いてあった。
 それを見て、
(よかった。あの計画、気がおもかったんだよな)
 人口を減らし、地球を守る計画を、所長は好きではなかったのだ。
 所長は、どんな計画が生まれたのか、楽しみにして、読んでいった。
 ところが、その計画書には、げんざい地球がかかえている人口ばくはつ、エネルギー問題、かんきょう破壊などの問題に、少しもふれていない。
 教師は子供たちに選ばせよう。子供の好きなことを自由に学ぶ時間を作ろう。宿題はなくそう。イタズラは、他人に迷惑をかけないかぎり、ゆるそう……などと、子供たちのことばかりが書いてあったのだ。
「ちょっと、待ってください。これ、ほんとうに地球をすくう計画書なのですか?」
 所長がコンピューターに声をかけた。
「ハイ。ソウデス。地球ヲ守ルタダ一ツノ方法ハ、子供タチガ秘メテイル無限ノ可能性ヲ、引キ出スコトデス。コレシカ、地球ヲスクウ方法ハ、アリマセン」
「でも、こんなことで、地球がすくわれるとは思えないのですが……」
 所長は、まだコンピューターがだした結論を信じられないでいた。
「ダイジョウブデス。子供タチハ、バカデハアリマセン。カナラズ、私タチコンピューターヨリ、スゴイ計画ヲタテ、地球ヲスクイマス」
 コンピューターはそういうと、ふたたび、つづきの計画書をすごいスピードで、タタタタタッと打ちだしはじめた。
 そのタタタタッというここちよい音は、まるで、コンピューターが笑っているようだった。
                          (おわり)
 学研「読物特集」に掲載



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by spanky2011th | 2011-08-21 12:51 | 童話 私の短編