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ふかひれスープの冒険(7)

        7
 ドスン、ドスン。
 サメが、コンチキ2号の船底をこうげきしだしました。
 船室には、にぶくて大きな音がひびきわたり、中にいる人たちは生きた心地がしません。
 そして、船は、まるで嵐にのまれたみたいに、グラン、グランと大きくゆれだしました。
 田西さんは、船のスピードをあげて、にげきろうとしましたが、サメとチェーンとがくっついているため、思うように進みません。 田西さんは、右に、左に、せわしなく、かじを切りました。ちょっと油断したら、船はひっくり返ってしまうでしょう。
 田西さんは、自分の判断ミスをくやみました。会議なんて開かないで、すぐに、いかりのチェーンを切っていれば、なんとかなっていたかもしれません。
「茂津さん、おりてきてください」
 田西さんは、大声で、マストの茂津さんをよびました。
 こんなとき、茂津さん以外に、金ノコで、チェーンを切れる人はいません。
「船長、なんっスか」
「金ノコで、チェーンを切ってください」
「こっちは、それどころじゃないっスよ」
 たしかに、茂津さんは、それどころじゃないようです。船が大きくゆれているので、ふり落とされないよう、マストに両手、両足でしがみついていて、とても、おりてこられる状態ではないようです。
「茂津さん、がんばってください。なんとかしますから」
 田西さんは、今度は、船室にむかって、
「矢古さん、きてください」
 コンチキ2号のちえぶくろの矢古さんをよびました。
 ゆれる船のデッキで、矢古さんに金ノコでチェーンを切るようにたのむのは、さかなに木にのぼれというのと同じです。
 田西さんは、
「矢古さん、にげきる方法を考えてください」
と、すがるような気持ちでいいました。
 ところが、矢古さんは、そっけなく、
「それはむりですよ。サメの方がこの船よりずっと早いですからね」
と、こたえました。
 ホホジロザメはふだん、時速3~4キロのスピードでゆったり泳いでいましたが、エサを取るときには、時速25キロくらいは楽に出します。
「はやく、茂津さんをおろしてあげないと、海におちてしまいます」
 田西さんがそういいながら、あごで茂津さんのいるマストをさしました。
 矢古さんは、茂津さんがいまにもマストから振り落とされようとしているのを見て、たいへんなことになっているのに、ようやく気がつきました。
「こりゃあ、なんとかしなくちゃ」
と、矢古さんは、ロダンの「考える人」のポーズで、座り込んでしまいました。
「とにかく、なにか考え出してください。これは、船長命令です」
 返事はありませんでした。矢古さんは、長考にはいってしまったのです。
「船長、もう、だめっス。手がつかれてきたっス」
「がんばってください。矢古さんが、なんとかしてくれますから」
 田西さんは、ゆれる船をたおさないように、かじをせわしなく動かしつづけました。
 一分くらいたったとき、矢古さんが、
「わかった!」
と、さけんで、立ち上がりました。
「そうだ。エサをあたえて、サメを満腹にしてしまえば、いいんだ」

 矢古さんは、そういうと、船室に首をつっこみ、
「藤壺さん、非常用食料をとってください」
と、どなりました。
「はい、わかりました」
 船室の藤壺さんは、のんびりした声でこたえると、イスのふたをもちあげ、中にためこんであるものを、つぎつぎへとひろしに手わたしました。
 それを受け取ったひろしは安光さんに、安光さんは矢古さんに、リレーでわたしていきました。
 インスタントラーメン、サラミ、かんパン、かんづめ、ドライフルーツなどなど、いざというときのために積んであった非常用食料ですが、こんな風につかうことになるとは思ってもいませんでした。。
「しっかり食べて、はやく満腹になれよ」
 矢古さんは、受け取ると、波間に、つぎつぎと、ほうりこんでいきました。かんづめは、ドボンと音を立てると、スーッとしずんでしまいましたが、ラーメンなどはうかんでいます。
「てやんでえ。ついでに、こいつも、くらえ」 
 なにを考えているのか、安光さんが、毛布とねぶくろを持ってきて、海に投げ込みました。
 投げ込まれた毛布がひろがって、波にあわせて、ゆらり、ゆらりとただよいだしました。
 ドスン、ドスンと船底をこうげきする音がやみました。
 そして、サメがいきおいよくうかんできて、大口でパクリとねぶくろをひとのみし、つぎに毛布をたべだしまいました。
 毛布はひろがっているため、たべにくいらしく、ガブリとかみつくと、頭を左右にふり、かき切ってからのみこもうとしています。
「茂津さん、いまです。おりてきてください」 
 田西さんはそうさけぼうとしましたが、もう、その必要はありませんでした。
「ああ。こわかったっス」
 茂津さんは、もう、マストからとびおりていて、あわててそうじゅう席にとびこんできたからです。
 田西さん、矢古さん、安光さんの三人がいるそうじゅう席に、茂津さんがとびこんできたので、身動きがとれません。満員電車にのっているようなものです。
「よかった。けがはありませんでしたか」
「だいじょうぶっス」
「茂津さん、困りますよ。これからは、船長めいれいにはしたがってください」
「もうしわけなかったっス」
 茂津さんが五分がり頭をかきながらあやまりまっていると、藤壺さんが船室から顔をだし、
「そうですよ。船長命令にはしたがってもらわなくてはいけませんね」
と、自分のことはわすれていいました。
「船長、てえへんだ。てえへんだ。まわりを見てくだせえ」
 安光さんがさけびました。
 田西さんは、右手の窓から、外を見て、息がとまるほど、びっくりしてしまいました。 背中にトラのようなもようのあるサメが、ウジャウジャ集まってきていたのです。たたみをたてに2枚ならべたくらいの大きさ(3・6メートル)はあります。
 茂津さんを助けるために投げ込んだ非常用食料にひきよせられてきたみたいです。
「イタチザメですね」
 矢古さんが説明しました。
「矢古さん、これは人をおそいますか」
「ええ。人の被害の大半は、このサメによってです」
 一難去ってまた一難とは、このことです。 田西さんは、頭をかかえてしまいました。
 奥さんが大反対したのに、船にのってしまったことの、バチが当たったかも知れない。田西さんは、チラッとそんなことを思いましたが、いまは、そんなことをいっているときではありません。
 田西さんは、かわいい息子の横顔を見ました。
 どんなことがあっても、助かってみせるぞ。やる気がわいてきます。
 田西さんは、いい出しにくかったのですが、のりくみ員のいのちがかかっているので、
「疲れているところ、もうしわけないのですが、いかりのチェーンをきってくれませんか」
と、茂津さんにたのみました。
「がってん、しょうちのすけっスよ」
 茂津さんは、船室にはいって、工具箱をもってきました。
「安光さん、ちょっと、じゃまっスよ」
 茂津さんが、そのまま、デッキヘ出ていこうとしたので、あわてて、田西さんがとめました。
「茂津さん、いのちづなをつけていってください」


                              (つづく)

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by spanky2011th | 2011-08-29 12:40 | 長編童話 ふかひれスープの冒険

ふかひれスープの冒険(6)

        6
 きんきゅうじたいです。
「茂津さん、おねがいしますね」
茂津さんにかじをまかすと、船長の田西さんは、船室に向かいました。そうじゅう中の茂津さん以外は、乗りくみ員ぜん員、船室に集まっています。
 ここで、船室の説明をしておきましょう。船室の真ん中に、長方形の大きな木のテーブルがあって、そのわき、つまり、船のわきにあたるところに、木で作られた長イスがあります。この長イスのフタをあけると、保存のきく食料や、救命どう衣など、ふだんは使わないものがしまわれています。
 田西さんは、万が一のことを思って、救命どう衣をつけることを、全員に命令しました。
「いいですか。ぜったいこの船室からでないでください。海にほうりこまれたら、サメは、アザラシかなんかだと思って、ガブリと食いついてきますからね」
 田西さんのサメの知識はそれくらいのものでした。
「それでは、会議をします。これから、どうしたらよいか、みんなの意見を聞かせてください」
 田西さんがそういうと、真っ先に口を開いたのは、矢古さんでした。
「『老人と海』みたいに、これは長いたたかいになりますね」
 『老人と海』は、老人と巨大なバショウカジキとのたたかいを描いた有名な小説です。
「このトウヘンボクめ。なに、くだらねえこといってんだ。キャッチ・アンド・リリースきゃねえてんだ。いまは、この船とつなかっている。それを放したら、三十八計、逃げるが勝ちだ」
 安光さんがつかった英語は、さかなをつりあげたらそのまま逃がしてあげる、というアメリカやヨーロッパのやり方です。でも、そんなことを安光さんがいいだしたのは、ほんとうはサメがこわかったからです。
「でも、ふかひれスープにして、食べたいなあ~」
 自分が食べられそうになったのに、藤壺さんは、まだ、そんなことをいってました。
「なにいってんだ。あいては、人くいザメだぞ。」
 安光さんの使った「人くいザメ」ということばに、矢古さんはカチンときたみたいです。
 スクッと立ち上がると、テーブルをドンとたたき、
「サメの名誉のためにいいます。人をおそうといっても、サメはちっとも悪くないのです。サメがこの世にあらわれたのは、4億年も前で、恐竜もまだあらわれていなかった時代から、サメは海にいたのです。そのなわばりに、人間が海水浴場やサーフィン場、さらにフィシィッシング場にして、たまに、サメがエサとまちがえて人をおそえば、人間はサメをみな殺しにしようとするのです。サメで死ぬ人より、おもちをのどにつまらせて死ぬ人の方が多いのですよ」
 矢古さんお得意の講義がはじまりました。
「インドのトラがいま絶滅しそうになって保護されてますが、人をおそうという理由で、むやみやたらと人間がトラを殺したからです。ホホジロザメもこのままだと絶滅してしまいそうだと、保護しているところもあるのです。自然というのは、ぜつみょうなバランスをたもっていて、食物連鎖で……」 
 このまま、いつまでも、講義をつづけそうなので、田西さんが、エヘン、エヘンとせきばらいしました。
 矢古さんは、会議中なのに、自分一人で講義にしてしまったことに気がつき、話しをやめました。
 だまってきいていたひろしには、矢古さんのいおうとしていることの半分もわかりませんでした。でも、ひろしは、この楽しい仲間がひとりでもサメに食べられてしまったら、とても悲しいと思ったので、
「ほくもにげるのが一番だと思うけど……」
と、自信なげにいいました。
 だまって会議のなりゆきを聞いていた田西船長は、むすこの意見をきき、小さくうなずきました。
 田西さんは決断したのです。
「わたしも、安光さんとひろしの意見に賛成です。反対は藤壺さんだけ。では、これから、サメをいかりからはなして、いちもくさんでにげることにします」
と、会議をまとめました。
 藤壺さん以外は、その言葉を聞いて、ホッとしました。藤壺さんだけがふまんそうです。
 そのとき、入り口から、茂津さんが、あわてたようすで、顔をのぞかせました。
「船長、大変っス」
 田西さんは、いそいでそうじゅう席にでました。
「ほら。ようすが変っスよ」
 茂津さんがいうように、それまで、いかりをはきだそうともがいていたホホジロザメが、もがくのをやめていて、ゆっくりと、からだを左右にふりながら、円をえがいて泳いでいました。
「ちょっくら、ひとのぼりしてくるっス」
 茂津さんはかじ取りを田西さんにまかせ、ヒョイと双眼鏡を手に取ると、スルスルとマストのてっぺんによじのぼりました。
「サメのやつ、こっちをこわい目でにらんでるっス」
 茂津さんの報告のとおり、サメは泳ぐのをやめ、一か所にうかんでいます。
 田西さんは、いよいよだな、と思いました。
「こうげきをしかけてくる気です。茂津さん、あぶないですから、おりてきてください」
と、よびかけました。
 でも、茂津さんは、すまし顔で、
「だいじょうぶっスよ。だてに大工でめしは食ってないっス」
と、こたえ、片手でマストにしがみつき、片手で双眼鏡を目に当てました。
 サメはゆっくりと、コンチキ2号にむかって、およぎだしました。
そして、スピードをあげると、スーッと海にもぐってしまいました。

「船長、サメのやつ、下からおそう気っスよ」
「茂津さん、おりてください。あぶないですよ」
 田西さんがいくらそういっても、船長命令にそむいて、茂津さんはおりてこようとしませんでした。
(つづく)


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by spanky2011th | 2011-08-29 12:27 | 長編童話 ふかひれスープの冒険

題述構文のパターン認識はこうだ

分析・帰納法では日本語は理解できない

 ちなみに、文法学者によると、日本語の文を大きくわけると、以下の三つがあるとされているらしい。この文法学者というのは、ただド真面目に橋本文法が急造した品詞でひたすら膨大な量の日本語文章を分析し、共通点を探しまくっていれば、帰納法でいつか、正しい答えに辿り着けるという信仰を持っている人たちのことだが。

「動詞述語文」……犬が(は)走る。
「名詞述語文」……彼は(が)人間だ。吾輩は(が)猫だ。
「形容詞述語文」……彼女は(が)美しい。犯人は(が)悪賢い。

 しかし、私は、「名詞述語文」「形容詞述語文」の両方を一つとして考えるのだ。そして、なにより大切なのが「である」である。辞書などでは「助動詞」と、動詞より格下扱いされているが、実はこの「である」はとても重要な働きをしている。「だ」も「体言止め」も同じで、「である」の仲間にすぎない。

「基本文型1は変幻自在で、神出鬼没(1) 」でも触れたが、仏教の考え方十如是「相・性・体・力・作・因・縁・果・報・本末究境等」の、ほぼ無限大にある「属性」の中から一つをとりあげ、「である」と「義」を定めるために使用しているのだ。動詞などの場合は「こと」「もの」「の」の形式名詞を付け加えているだけ。

彼は、ネコみたいである。
彼は、短身である。
彼は、耳が欠けてる。
彼は、声が大山のぶ代にそっくりである。
彼は、ドラ焼きが好きである。
彼は、ネズミが嫌いである。
彼は、親切である。
彼は、金属である。
彼は、精密機械だ。
彼は、走るのである。
彼は、歩くのである。
彼は、歌うのである。
彼は、いろいろな発明品で、色々な事件を起こすのである。
彼は、博士に作られたのである。
彼は、友達がノビ太である。

文型1Aの場合は、
「主題」は「属性」
というパターンがあって、その中に、自立語をポンポンと投げ込んでいるだけなのだ。

 限りなくある属性の中から、話者がその一つを選択して「義」を「定」めるのが「である」の働きである。
 たとえば、三島由紀夫が「文章読本」で書いている「世界一の美女」の記述の仕方。
「彼女は世界一の美人であった。」
と書いたら、誰が文句をつけようと、世界一の美人なのである。
 事実など、関係ない。ただし、作品の読者は「この作家、趣味悪いよね。キモーイ。」と思われるかもしれないが。

 話を戻そう。
 私たちの言語活動は、文節や助詞などを正しく組み合わせて、帰納法的に「正しい文章」を作っている訳ではない。パターン認識で、直感的、演繹的に使用しているのだ。脳がそのようにできているのだから、どうしようもない。フランスの思想家ベルグソンの考え方が有効だ。ちなみに、橋本文法は、植物や動物をジャンル分けすることが科学的であると信じられていた「ベルグソン以前」に作られている。

「私  山  好き」
という三つの自立語が並んでいたら、スペース部分に勝手に助詞を補填し、「私は山が好き」と理解してしまう。

 暗闇で、逆三角形のものを見て、その中に点が三つはいっていたら、心霊と思い込んでしまう。これなどは、パターン認識の最たるものだ。
 木からおりて生活を始めたご先祖様たちは、身を守るために、闇の中に潜む敵をすばやく発見しないと、生命の危機にさらされた。逆三角形で眼らしきものを見たとたん、敵だと思い込むようにできているのだ。
 いちいち、三角形のものがあって、眼らしきものがあるから敵かもしれない、などと考えていない。見たとたんに、ご先祖様たちは逃げ出してしまうのである。
 しつこいようだが、パターン認識なのだ。

「椅子がある(動詞)」
「椅子がない(形容詞)」


は、同じなのである。これを「動詞述語文」「形容詞述語文」と、別物と考えること自体が不自然なのだ。

文型1Bの「はが文」の場合は、
「主題」は「着眼点」が「属性」
というパターンがあって、その中に、自立語をポンポンと投げ込んでいるだけなのだ。

「だれそれの話ですよ」(主題)+「なになに」(着眼点)+「どうした」(属性)

(1)彼は目が青い。
(2)彼はウナギが好き。
(3)彼は娘が結婚した。

「(2)彼はウナギが好き。」の場合の「が」について、分析派はこの「が」は目的格の助詞である、というように理解する。
(1)(3)は主格の助詞であるそうだ。

文型2の陳述構文なら、「が」ではなく、「(2)彼はウナギを好いている。」というように「を」が用いられる。

 小学生・中学生の国語の時間で学ぶ学校文法は、あまりに古すぎて、無意味の極めつけ。というより、日本語の正しい理解の妨げになるばかりで、百害あって、一利しか利益がない。その一利も、無意味なことにも努力すると言う「忍耐力をつける」という一利しかないのである。
 学校文法は、撲滅されるべきだ。

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by spanky2011th | 2011-08-27 16:14 | 日本語  基本の3文型

ガンジーの「人類の7つの罪」

ガンジーの「人類の7つの罪」を真剣に考えるときが来た



 いま、私は、五十数年の人生でもっとも困難な事態に陥っていて、明日が見えない状況にある。
 しかし、いいたいことをいわないのは「腹ふくるるわざ」なので、ここで書いているのだが、なぜ、日本人はこんなに従順で、反骨精神がないのだろうか、という疑問がいつも、私の頭の中で渦巻いている。「和を持って尊しとなす」伝統が、悪しき方に働いているとしかいえないだろう。

 トインビーの歴史観ではないが、ルネッサンス時代に始まり、フランス革命時代に大きく進化し、二十世紀に大きく花開いた一つの文明が、いま終焉を迎えようとしている。私は、そう信じている。時代は400年、500年単位で大きく転換する。その転換期にきているのだ。
 この文明の底辺にあったのは、理性を尊ぶ「理性信仰」という宗教である。また、便利な「お金」「利息」という発明品であった。
 私は人間理性の信奉者であるが、私がいう理性とは、宇宙とか、自然とかの神秘の前で謙虚になり、そこから多くのものを学んでいこう、という姿勢である。
 ところが、いま、その「理性信仰」「お金」「利息」がかってに一人歩きし巨大化して、人間に逆襲をし始めている。
 原発事故の根本を考えると、絶対的な安全は確立されていないのに、「いずれ、その解決策はみつかるはずだ」という人間の傲慢さであろう。
 聴くところによると、宇宙の動きを研究していくと、私たちの知っている物質というものだけでは宇宙のことはどうしても説明がつかないというのだ。「ダークマター」「ダークエネルギー」という未知のものがほとんどを占めていて、既知のものは4パーセントに満たないという。
 知れば知るほど謎が増えていく、というのが学問の世界であろう。それを十分に知っていて、学問対象に対して謙虚な姿勢を保つ理性を私は信じたい。

 かつて、ガンジーが「人類の7つの罪」と指摘したことがある。早期退陣に追い込まれた総理が就任直後に口にして少し話題になったが、その人の無能ぶりにより、このガンジーの「人類の7つの罪」までも軽く見られてしまったことが残念でならない。

(1)理念なき政治
(2)労働なき富
(3)良心なき娯楽
(4)人格なき知識
(5)道徳なき商業
(6)人間性なき科学
(7)献身なき宗教


 いま、日本は、というよりも、世界全体が、この7つの大罪を犯しまくっていないだろうか。
 理念よりも世論ばかり気にしている政治家は口を開くと「世論の動向を見て」と口にする。
 総理になった自分の息子に毎月何百万円という子ども手当を贈っていた某財閥の母親。当然、彼女の生活の源になったのは、自分が保有している株である。彼女は額に汗して、最低賃金で働き、生活していく苦労を知っているのだろうか。
 ゲームソフトのCERO:Z指定の内容を見てみれば、一目瞭然。ゲーム脳の問題も一時取り上げられたが、単純に考えて、毎日、一時間でも二時間でも「敵を見たらひたすらたたきつぶす」ことのみに専心していて、それが心に影響をもたらさないはずがない。社会学者(宮台真二のような)の中にはメリットばかりをしゃべり、それよりも大きなデメリットに触れようとしていない。
 とにかく、今一度、「人類の7つの罪」を真剣に考えるべきときだろう。


ピンクロフロイドのマネーです。



ザ・クラッシュの「ロンドン・コーリング」です。「トーキョー・コーリング」というような曲が日本で生まれないのは日本の不幸です。



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by spanky2011th | 2011-08-21 21:52 | 世相 妄想随談(音楽付き)

コンピューターが笑う日

コンピューターが笑う日〜それはデマからはじまった〜
             
         1
「明。きのうのあれ、見たか?」
 明が教室にはいると、浩司がすっとんでやってきた。
「ああ。見た、見た。こわかったなあ」
 明も、すぐに答える。だれかに、話したくて、たまらなかったのだ。
 「きのうのあれ」というのは、きのう放送された『宇宙人が地球征服をたくらんでいる』というテレビばんぐみだ。
 宇宙人は、コッソリと地球人のなかにひそんでいて、すこしずつ地球を征服しているというのだ。
 それによると、アメリカの政府は宇宙人と手をむすび、とんでもない兵器を作っているのだそうだ。そして、世界の大会社のトップも、世界の政治のトップも、半分ちかくがすでに宇宙人なのだという。でも、宇宙人はマスコミに“宇宙人などいない”という記事を書かせているので、ふつうの人はそれを知らない……というのだ。
 とくに明がショックをうけたのは、宇宙人は、つぎつぎとあたらしい娯楽を人間たちにあたえ、人間たちの考える力をうばおうとしているということだ。
 明と浩司があれこれ話していると、信也と博も、話に加わってきた。この四人は、いつもいっしょの仲良し組だ。
「やっぱり、宇宙人がひそんでいるというの、ウソだよなあ」
「でも、コバ先生なんか、宇宙人っぽいぞ」 
 話は大いにもりあがった。
 でも、だれも、ほんとうに宇宙人がいるとは信じていない。テレビゲームやアニメの世界とは、ちがうのだ。
         2
 テレビ放送があってから一週間ご、明はビックリしてしまった。
 とつぜん、あちこちの超高層ビルがばくはつされるという事件がおきたのだ。そして、「地球人につぐ」という、ばくはつ犯人からの声明文が公表された。
「地球人は宇宙のしっぱい作である。このままでは、聖なる青き星《地球》は、地球人の手により、台なしにされてしまう。よって、われわれ宇宙人は、地球人の進歩を止め、聖なる青き星《地球》を守ることにきめた」
というのだ。
 明のママなんて、その「地球人につぐ」をテレビで知ると、
「まったく、国はいままで、なにをしていたの。宇宙人が地球にきているの、知らなかったのかしら。無責任すぎるわよ」
と、プリプリおこりだした。
「ママ、おちついてよ。まだ、ほんとうに宇宙人がやったと、決まったわけじゃないだろ」 
 明がそういっても、ママは、
「じゃあ、だれがやったというの。宇宙人しかいないわよ」
と、きめつける。
 つぎからつぎへと、事件はおきつづけた。
 地下鉄がぼう走して事故をおこしたり、テレビにとつぜん宇宙人のすがた(なんと、あのジョージ・ウェルズの火星人そっくりのすがたをしていたのだ!)がうつりケタケタ笑ったり、人工えい星が太平洋におちてきたり、と信じられない事件がおきつづけた。
         3
 宇宙人そうどうが終わるまで、学校は全国的に休みになった。
 明は毎日、ママといっしょに、テレビを見てすごしていた。宇宙人そうどうばかりやっているので、なんだか、ほんとうに宇宙人があちこちに出没しているような気になってくる。
 一か月後、『宇宙人とりしまり法』という法律ができた。明は、そんな法律ができても、宇宙人がつかまるわけないと思っていた。ところが……。
 おどろいたことに、ほんとうに宇宙人がつかまりだしたのだ。さらにおどろいたのは、宇宙人は、地球人そっくりのすがたで、地球人そっくりの生活をしていた。
 そんなある日。浩司から、
「おい。明、話があるんだ」
と電話がかかってきた。
「なんだよ」
「ちょっと、ぼくんちまで、きてくれよ」
「電話じゃ話せないのか」
「ああ」
 というようなわけで、明は、浩司の家にいくことにした。
「宇宙人がうろついているから、知らない人に声かけられたら、にげるのよ」
と、ママに注意されていたので、明はママの忠告どおり、用心していった。
 明のくるのを待っていた浩司は、
「おい。たいへんな物、見つけちゃったんだ」
と、明を浩司の父親の部屋へ案内した。
 ひまにあかせて、浩司は、父親のパソコンで、あちこちのコンピューターにハッキングしていたのだそうだ。
「ある研究所のスーパーコンピューターにアクセスしようとしたんだ。パスワードがわからなかったから、じょうだんで、《ハルマゲドンより天丼が食いたい》と入れたら、こんなのがでてきたんだ。見てくれよ」
 浩司のゆびさす画面を見て、明は、
「ええっ!」
と声をだしてしまった。
 そこには、いまおきていることの計画書がうつしだされていた。
 まず、宇宙人が地球を征服しているというデマをながし、それから、宇宙人の手による事件をおこしていく。さらに、法律を作り、これから生きのびるのに値しない人間をつかまえていく、というのだ。
「おい。宇宙人が地球征服をたくらんでいるというのはウソだったのか」
「どうも、そうらしい。そして、いま宇宙人としてつかまっているのは、しょうしんしょうめいの地球人らしいぞ」
「ええ。じゃあ。どうしたら、いいんだ?」
「わからないから、明の知恵をかりようと思ったんだ」
「でも、だれが、なんのために、こんな計画、たてたんだ?」
「それもわからないんだ」
 二人は、ゾーッとした。
 浩司と明は、どうしたらいいか、話しあった。が、いい知恵はでてこなかった。
         4
 よく日。明は、テレビにうつしだされた浩司の家ぞくの顔写真を見て、
(ええっ。ウソだ!)
 息が止まるほどおどろいた。浩司の家ぞく全員が宇宙人として、つかまってしまったのだ。
「きのう、つかまった宇宙人は、百二十七人です。まだまだ、しのんでいますので、宇宙人と思われる人物を見つけたら、すみやかに、宇宙人とりしまり協会まで、れんらくをください」
 アナウンサーが事務的に話している。
「あれ? 浩ちゃんじゃない?」
 ママが浩司に気づいて、そういう。
「うん。でも、浩司は宇宙人じゃないよ」
「でも、ああやって、つかまったのだから、宇宙人にきまってるわ。まったく、いやに世の中になったものね。政治がわるいのよ。もっと、しっかりやってもらわないと、わたしたち、安心してくらせないじゃないの!」
 ママがまた政治のせいにした。
 明は、ママを相手にしないことにした。
(浩司。待ってろよ。ぜったい、助けるからな)
 そんなことより、あの研究所でなにがおこなわれようとしているのか、それをしらべなくてはならない。
 明は、信用できる仲間をあつめることにした。電話だとあぶないと思ったので、自転車で声をかけていった。
 集合場所は、中央公園のしばふの上だ。
 博、信也の二人も、自転車でやってきた。
 浩司のことはすでに知っていて、二人ともすごく心配している。
 明は、きのう見た計画書のことを話し、
「浩司がつかまったのと、あの計画書はぜったいに関係がある。で、ぼくのきおくが正しければ……」
といって、きのうパソコンで見た地球問題研究所という名をみんなにつげた。
「じゃあ、RPGの基本にのっとって、まずは、そこの情報を集め、役に立ちそうなアイテムをそろえて、ふたたび、ここに集合しよう。時間は四時」
「じゃあ。ぼくたちは地球の平和を守る戦士といったところだね。さらわれた仲間を助けだす旅に、いざ、しゅっぱーつ!」
 三人は街へちらばった。
         5
 明は本屋へいき、いろいろと調べ、ちょっとおなかがすいてきたので、とりあえず、いったん、家に戻ることにした。そして、そこで見たのは………。
 マンションの前に人だかりができていて、
「やあね。加藤さん一家、宇宙人だったらしいのよ」
と、やじ馬がおしゃべりしている。
(あのマンションで加藤といったら、うちだけだぞ)
 明は気づかれてはたいへんだと思い、電話ボックスのかげにかくれた。
 やがて、けいさつ官に両手をつかまれて、ママがでてきた。
「わたしは宇宙人ではありません。ほんとうです。信じてください」
と、もがきながら叫んでいるママ。
 でも、けいさつ官は、
「宇宙人はみんなそういうのだ。収容所で、ほんとうのことをきこう」
と、ママをパトカーでつれ去った。
(つぎは、ぼくの番だ。どうしよう?)
 明はとほうにくれてしまった。
 こうなったら、いまやろうとしていることを、どうしても成功させなくてはならない。 明は、人目をさけて、公園へ向かった。
 公園の例のしばふのところに、すでに二人がすわっていた。
「ママが、つかまってしまった」
 明のことばに、二人はおどろいている。
「あの研究所、意外と近くにあったぞ。となり駅から、歩いて十五分くらいのところにあるんだ」
 信也が地図をひろげた。
「こうなったら、どうしても、あの研究所の秘密をあばかなくてはならないな。ぼくのパパ、しんぶん記者だから、きっと、記事にしてくれるよ」
と、博がいう。父親のえいきょうか、博はいろいろなことを知っているし、本もたくさん読んでいる。
「いつ、しのびこむ?」
「もちろん、今夜さ。でも、ゆだんできないぞ。いいな」
 夜まで、うえ込みの中にかくれることにした。つつじの木と木のあいだが、トンネルのようになっていて、そこをもぐっていくと、ポッカリと広い空間ができているのだ。缶けりをやっていて、発見した秘密のアジトだ。
         6
 夜。明たちは、自転車で、その研究所に向かった。
 研究所は、白いコンクリートでできたりっぱな建物だった。2メートルくらいの高さのへいで囲ってある。
 三人は、門から中をのぞきこむと、
「どうやって、しのびこむ?」
「正面げんかんからはいるしかなさそうだな」
 げんかんには、ガードマンがいる。
 そんなことを話していると、ガラスドアの向こうに、職員らしい男がすがたをあらわした。プラスチックのカードを、ドアのわきの機械にいれると、ドアがひらいた。カードがないと、ひらかない仕組みになっているらしい。
 男は、ちゅうしゃ場の自動車にのりこんで、外へでていった。帰るらしい。
「とにかく、あのげんかんにいってみよう。もしかしたら、うちのマンションと同じで、ドアをこじあければ、あくかもしれないぞ」と、。
 明のマンションのドアは、暗証番号でひらく仕組みになっている。でも、明は、そんなめんどうなことはしない。ガラスとガラスのすきまにゆびをいれ、こじあけてしまうのだ。
「でも、あそこにガードマンがいるぞ」
 博がそういうと、信也が、
「じゃあ、あのガードマン、ぼくがなんとかするよ」
と、くらやみにまぎれて、ビルのうらてへ走っていった。
 しばらくすると、うらてで、パパンパンパンとはげしい音がした。ばく竹らしい。
 げんかんのところの小部屋からガードマンが二人とびだして、うらてへ走っていく。
「よし。いまだ」
 明たち二人は、げんかんへ走った。
 二人がドアに近づくと、
「イラッシャイマセ。カードヲオ入レクダサイ」
と、やさしい女の人の声がした。機械がしゃべっているのだ。でも、その声を無視して、明はいつものやり方で、ドアをこじあけようとした。
「ソウイウコトヲスルト、警報ヲ鳴ラシマス。カードヲ、オ入レクダサイ」
「うるさいな。カード、わすれたんだよ」
「デハ、暗証番号ヲ、押シテクダサイ」
「そんなの、知らないよ」
「デハ、オ通シデキマセン。オ帰リクダサイ」
 帰るわけにはいかない。明はわきの機械に目をやった。A〜Zのボタンがならんでいる。 それを見て、ピンと来るものがあって、
「わかったよ。いれるよ」
というと、例の「ハルマゲドンより天丼が食いたい」と、明は入力してみた。
 ドアがひらいた。
「ドウゾ、オ通リクダサイ」
 二人がドアを通ろうとしたとき、信也がかけこんできた。
         7
 大型トラックくらいの大きさのコンピューターが3台、コンピューター室の真ん中にあった。そして、だれもいないのに、ウイーン、ウイーンとうなり声をあげている。なにかを計算しているらしい。
 明たち三人が、その部屋に入ると、
「イラッシャイマセ。質問ヲドウゾ」
 コンピューターが語りかけたので、明は、
「ママと浩司は、どこにいるのですか?」
「ママトイウノハ、ダレデスカ?」
「加藤洋子です」
「フタリハ、イマ、第5収容所ニイマス」
「ふたりをだしてください」
「ダメデス。山本浩司ハ、ワレワレノ秘密ヲ知リスギマシタ。加藤洋子ハ、ナンデモ他人ノセイニスルノデ、生キル資格ガアリマセン」
 たしかにコンピュータがいうように、ママにはそういう欠点がある。でも、明には、たった一人のママだし、やさしいところもあるのだ。
 泣きたい気分になってきて、明はだまってしまった。
 こんどは、博が、
「どうして、宇宙人のとりしまりといいながら、人間をつかまえるんですか」
 ビクビクしながら質問した。
 さすが、しんぶん記者の息子だけはある。いまおきていることの真相をさぐりだそうとしたのだ。
「人類ガフエスギタカラデス。世界ノ人口ハ今70億人デス。ソノウチ、11億人ガ食ベルモノモナイ状態デス。コノママ人口ガフエツヅケルト、人類ハ人口バクハツデ、ホロビマス。デスカラ、手オクレニナラナイウチニ、適正ナ人口ニ引キモドスコトニシタノデス……」
 コンピューターは、そんなこわいことを、平気でしゃべりつづける。そして、大きな液晶画面に、栄養失調で死にそうになっている子供たちのすがたを、うつしだした。
 三人はあまりのむごさに、とりはだがたってきた。
「やめてくれ!」
 信也が叫んだ。見たくなかったのだろう。
「ハイ。ワカリマシタ」
と、コンピューターがしゃべり、液晶画面は黒くなった。
「そんなの、でたらめだ。ぼく、知ってるぞ。
地球上には100億人分くらいの食料はあるはずだ!」
と、博がつづいて叫んだ。
「ハイ。ソノ通リデス。デモ、人類ハ愚カスギテ、100億人分ノ食料ガアッテモ、11億人ハ飢エテ死ニソウニナッテイルノデス……」 
 明は、
(人間はそんなバカではないはずだ)
 コンピューターの説明を聞くまいとして、耳をふさいだ。そして、
「そんなの、ウソだ。ぼくたちはバカじゃない。みんなに食べ物がゆきわたる社会くらい、作っれるぞ」
 コンピューターに向かって、思わず、どなってしまった。
「イマノ発言ニ、マチガエガアリマス。子供ハ、バカデス。愚カナ大人ニナル前ノ、バカデス」
 明は「ぼくたち人間」のつもりでいったのだが、コンピューターは「ぼくたち子供」とかんちがいしている。
「バカナ子供ガ学習シテ、愚カナ大人ニナルノデス。子供ハ、自分タチデハ、ナニモデキナイ。ツマリ、バカデス……」
 コンピューターは、
「子供はバカ」
だといいつづける。
 三人はだんだん、はらがたってきた。
「そんなことないぞ。お前こそ、バカじゃないか。なあ、みんな!」
 明のことばに、ほかの二人も、
「そうだ。お前こそ、バカだ!」
「ぼくたち子供はバカじゃない!」
と、いいたてた。
「ソンナコトハナイ。私タチコンピューターハ、リコウデス」
「ちがうぞ。バカだ」
「チガイマス。バカハ子供デス」
 おたがいに相手がバカだといいつづけているだけで、いくらたっても、結論がでない。
「ワカリマシタ。デハ、ドチラガ頭ガイイカ、仲間タチト相談シテミマス」
 コンピューターはそういうと、ウイーン、ウイーンとうなり声をたてはじめた。
         8
「結論ガ、デマシタ」
 やく一時間ご、コンピューターが話しだした。
「トテモ、ムズカシイ問題デシタノデ、時間ガカカリマシタ。結論ヲイイマス。アナタガタガイウヨウニ、子供タチハ、バカデハアリマセン」
「やったあ!」
と、三人はとびはね、だきあった。
 明は、すかさず、
「だったら、バカなコンピューターは、りこうな子供のいうことをきくのだぞ」
「ハイ」
「だったら、ママと、浩司を返してよ」
「ハイ」
 コンピューターの返事に、
「やったあ」
 明はガッツポーズをとった。
「じゃあ、今の計画も中止しろ。いいな」
 博がめいれいした。
「ハイ。ワカリマシタ。デハ、私ハ、コレデ失礼シマス。コンピューター・サミットノ臨時総会ニ出席シ、地球ヲスクウ方法ニツイテ、話シ合ワナクテハイケマセンノデ……」
 コンピューターはおしゃべりを止めると、ふたたび、ウイーン、ウイーンとうなり声をたてはじめた。
「やったあ。ぼくたちは、コンピューターのおそろしい計画を止めさせて、仲間をすくいだしたんだね」
 信也がよろこんでそういうと、博が、
「でも、ぼく、ショックだったなあ。地球上に、あんなに、困っている人たちがいるとは思わなかったし……」
と、ちょっとしんみりした声だ。明も、
ほんとうにそうだよな。コンピューターだけに、まかせておけないよな」
「そうだよ。ぼくたち、コンピューターのわるだくみをとめられたんだ。だから、困っている人たちだって、たすけられるはずだよ」 
 信也がそういう。
 明も同じ気持ちだったので、ウンとうなずき、三人、ガッチリとあくしゅした。
 もう、夜中の一時すぎだった。
         9
 よく朝。
 職員たちが、出社しだした。研究所が、にわかにそうぞうしくなってきた。
 研究所の所長は、いつもどおり、コンピューター室にはいると、
 「おはようございます。今日の計画はどのようになっているのでしょうか?」
と、コンピューターにおうかがいをたてた。
 彼の朝一番のしごとは、コンピューターがたてた計画を、政府とか、宇宙人とりしまり協会とかへ、れんらくすることだ。
「オハヨウゴザイマス。イイ天気デスネ」
 コンピューターのあいさつを耳にして、
(あれっ?)
と、所長は思った。コンピューターが天気のことを気にするなんて、いままでなかったことだから。
「ずいぶんと、きげんがいいみたいですが、なにか、いいことでもあったのですか?」
「ハイ。昨夜、世界中ノコンピューターガ集マッテ、臨時総会ガ開催サレマシタ。ソシテ、地球ヲスクウ、トテモ素敵ナ計画ガ生レマシタ」
「そうですか。それはすごい」
「ソノ計画ヲ打チダシマス。スミヤカニ、関係シテイル人タチニ、伝エテクダサイ」
 コンピューターが、タタタタッとすごいスピードで、今日一日の計画を打ちだしはじめた。
 その計画書には、宇宙人とりしまり計画の中止、宇宙人の釈放などが書いてあった。
 それを見て、
(よかった。あの計画、気がおもかったんだよな)
 人口を減らし、地球を守る計画を、所長は好きではなかったのだ。
 所長は、どんな計画が生まれたのか、楽しみにして、読んでいった。
 ところが、その計画書には、げんざい地球がかかえている人口ばくはつ、エネルギー問題、かんきょう破壊などの問題に、少しもふれていない。
 教師は子供たちに選ばせよう。子供の好きなことを自由に学ぶ時間を作ろう。宿題はなくそう。イタズラは、他人に迷惑をかけないかぎり、ゆるそう……などと、子供たちのことばかりが書いてあったのだ。
「ちょっと、待ってください。これ、ほんとうに地球をすくう計画書なのですか?」
 所長がコンピューターに声をかけた。
「ハイ。ソウデス。地球ヲ守ルタダ一ツノ方法ハ、子供タチガ秘メテイル無限ノ可能性ヲ、引キ出スコトデス。コレシカ、地球ヲスクウ方法ハ、アリマセン」
「でも、こんなことで、地球がすくわれるとは思えないのですが……」
 所長は、まだコンピューターがだした結論を信じられないでいた。
「ダイジョウブデス。子供タチハ、バカデハアリマセン。カナラズ、私タチコンピューターヨリ、スゴイ計画ヲタテ、地球ヲスクイマス」
 コンピューターはそういうと、ふたたび、つづきの計画書をすごいスピードで、タタタタタッと打ちだしはじめた。
 そのタタタタッというここちよい音は、まるで、コンピューターが笑っているようだった。
                          (おわり)
 学研「読物特集」に掲載



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by spanky2011th | 2011-08-21 12:51 | 童話 私の短編

ふかひれスープの冒険(5)

「ふかひれなんかに、食べられてなるものですか」
 藤壺さんは死にものぐるいになって、ほうちょうをサメの鼻つっらにつきだしていました。でも、相手は、ほうちょうなんて、ちっともこわくないらしく、大口をパクパクさせていました。
 それもむりはありません。なぜなら、ほうちょうみたいな歯を、口の中に、いっぱいならべているのですから。
「こら! あっちへいきなさい」
 藤壺さんは、どなりました。
 そのときです。
「ワン、ワン」
と、ほえながら、茶色いものがサメめがけて、すっとんでいきました。藤壺さんの愛犬ボランです。
 ボランは、見開いたぶきみなサメの目に、前足で、きょうれつなパンチをくらわすと、サッと身をひるがえし、藤壺さんのよこに立ち、
「ウー」
とうなりました。
 サメの食欲を自分にむけて、藤壺さんを助けようとしているみたいです。
 ボランのうなり声に反応して、藤壺さんをねらっていたサメが、ボランのほうに顔をむけました。
 ボランは、少しずつ、藤壺さんからはなれていきました。サメも、骨っぽい藤壺さんより、ボランの方がおいしいと思ったらしく、ボランの方に向きました。
 そのとき、こんどは、空気を切りさくような音とともに、なにかがヒューととんでいって、サメの目につきささりました。
 サメが横をむいたので、大工の茂津さんが、その目めがけて、キリを投げたのです。
 ことのなりゆきを見ていた田西さんは、
「藤壺さん。はやくにげください!」
 大声で、さけびました。
 田西さんの声に、藤壺さんはあわててとび起きようとしました。でも、サリーのすそをふんずけて、また、ゴロンところがってしまいました。
「藤壺さん、こっちです」
 だいぶ、あわてているみたいで、もがけばもがくほど、藤壺さんは、自分のサリーにからまっていくみたいです。
 田西さんの目に、チラッとなにかがうつりました。船を停泊せさるためのいかりです。
 田西さんは、イチかバチかで立ち上がりました。そして、
「よっこらしょ」
と、いかりを持ち上げると、反動をつけ、今度は、ほら穴のようなサメの口めがけて、
「どっこらしょ」
を投げこみました。
 ガリガリ、ガリガリ。
 サメは、なにか、えさが口にはいったものと思ったらしく、のみこもうとしました。
 いくらサメでも、鉄のいかりはかみくだくことも、のみこむこともできません。
 のみこめないなら、はき出そうと、口をアグアグと開いたり閉じたりしはじめました。でも、からだを船の上にのりだしているため、いかりはどんどん、サメののどの奥へ落ちていきます。
 田西さんは、サメがいかりと悪戦苦闘しているすきに、藤壺さんのそばにはっていき、藤壺さんのサリーをつかむと、ひっぱりました。
 船が大きくゆれました。
「うわあ!」
 田西さんは、ふり落とされまいとして、デッキによつんばいになりました。
 サメはあばれまわり、デッキから、海の中に消えていったのです。

 ガラガラ。
 いかり用のチェーンがすごいいきおいで出ていってます。
「船長、藤壺さん、だいじょうぶっスか」
 茂津さんがやってきて、藤壺さんをたすけ起こしました。
「藤壺さん。だいじょうぶですか」
 田西さんは、そういいながら、からんでいたサリーをほどいてやり、
「藤壺さん。こまりますよ。船長命令にはしたがってください」
と、きつくしかりました。
「もうしわけありませんでした。ふかひれスープのことで頭がいっぱいだったもので……」 
 藤壺さんがモシャモシャと頭をかいて、田西さんにあやまりました。
 ところが、いわなければいいのに、ガラガラ出ていくいかりに気がつくと、茂津さんが、
「安光さん、さかながにげてるっス」
といったものだから、安光さんも、つい、いつものくせで、
「そりゃあ、てえへんだ」
 すっとんできて、ウインチ(いかりのチェーンをまく機械)にすがりつきました。
「あぶなく、しかけをとられるところだった」
と、ボソボソつぶやき、チェーンを止めるレバーをひきました。
 ガクン。ミシミシ。
 船が大きくゆれ、きしむ音がしました。
 そのゆれで、起きあがろうとしていた藤壺さんが、また、ゴロンと転がってしまいました。
 安光さんは、
「あっ、いげねえ。こいつは、つりじゃなかった」
というなり、あわてて船室にもどってしまいました。
 田西さんは、海を見ました。
 海の中ににげこんだはずのサメが、二十メートルほど先に浮かんでいて、片目でコンチキ2号をじいっと、にらんでいました。
 真ん丸の目の片方には、茂津さんが投げたキリがつきささっていて、もう片方の目は、どんよりとした黒目で、なにを考えているのか、まったくわからない目でした。
 へびににらまれたカエルといいますが、それよりもこわいのが、サメににらまれることでしょう。
 サメが、大きく空にジャンプしだしました。いかりのチェーンをぶっち切ろうというのです。でも、鉄のチェーンは、切れません。
 こんどは、沖にむかって、力まかせに、船をひっぱりだしました。

 田西さんは、負けてなるものかと、岸に船首をむけると、エンジンを目いっぱいふかしました。
 岸に少し近づいたかと思うと、今度は、ひきもどされます。
 これでは、いつまでも勝負のつかないつなひきです。
 田西さんは、あわてて、
「全員、船室に集まれ」
と、船長命令をだしました。
 田西さんの命令に、今度は、藤壺さんもそむきませんでした。
                 (つづく)





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by spanky2011th | 2011-08-21 11:45 | 長編童話 ふかひれスープの冒険

ふかひれスープの冒険(4)

        4
 石のようにだまりこみ、じっと目の前の海をにらんでいた安光さんは、真っ青な海のそこから、なにか、とてつもなく大きなものが、浮かび上がってくるのに、気がつきました。
 はじめは黒いかげのようだったものが、だんだん大きくなってきました。そして、一メートルちかい大口をパカッとあけて、船のわきをドンドンけっていた藤壺さんの足を、ガブリとかじろうとしました。
 ところが、今にもかじられそうになったそのしゅんかん、藤壺さんが足をヒョイとあげたものだから、ガチリと歯をならすと、それは、巨大なからだをひねり、水しぶきを上げて海に落ちていきました。
 いまは、船のまわりをゆっくりと泳いでいます。
「ワッ、ワッ、ワッ! サメだあ!」
 いろいろなさかなを見てきた安光さんも、こんなに大きなサメを見るのは、はじめてでした。
 その大きいの、大きくないのって! たたみをたてに4枚ならべたくらいの大きさ(7・2メートル)はありそうです。灰色のからだからでている三角形の背びれでも、一メートルはあります。
 なによりも、大きな口のなかにビッシリ生えている歯をモロに見てしまったので、安光さんは、こわくて、からだがブルブルふるえてしまいました。
 一方、安光さんの声で、サメの方に目をやった矢古さんは、
「ほおーっ!」
と、巨大なサメにおどろきの声をあげてから、
「あいつはたしか……」
 と、あわてて図かんのページをめくり、ある写真をみつめだしました。
「………まちがいない。ホホジロザメだ。もっと沖に出ないといないはずなのに、どうして、こんなところにいるのだろう?」
と、しきりに首をひねり、考えこんでしまいました。
 矢古さんは、安光さんとちがって、サメが大口を開けたところを見のがしていたため、のんびりしているのでしょう。
「た、た、たいへんだ。すぐに、にげなくちゃ、食われちまうぞ」
 安光さんはすっとんで、そうじゅう席へいこうとしましたが、こわさで、腰がぬけてしまい、足がいうことをききません。
 ヨタヨタよつんばいでデッキを進むと、
「せ、せ、せ、船長!」
と、いいました。
「安光さん、どうしたのですか?」
 自分たちの船と同じくらいのサメが、すぐ後ろにいることを知らないので、田西さんはプカーリ、プカーリとマドロスパイプのけむりをはきながら、ゆったりとこたえました。
「サ、サ、サメが、お、お、おそってきました」
 どうして安光さんは、サメくらいで、こんなにあわてているのだろう、と不思議に思いながら、田西さんは、
「安心しなさい。海にサメがいるのはあたりまえです」
とこたえました。
 たしかに、航海していると、波間にサメの背びれが見えることは、しょっちゅうです。
 そばにいた茂津さんも、
「この船はサメくらいじゃあ、びくともしないっスよ」
と、自信たっぷりにいいました。
 二人に相手にされないので、安光さんは、頭にきてしまいました。
そしたら、こわさを忘れてしまい、
「とても、でっけえホホジロザメが、ねらってやがんだよ。この、すっとこどっこいが」
 それまで、もつれて、よく回らなかった舌が、よく回るようになりました。
 ホホジロザメと聞いて、田西さんはあわてて、うしろをふりむきました。そして、コンチキ2号を追いかけてくる巨大なサメを見て、青くなってしまいした。
「これは、たいへんだ。全員、きんきゅうひなん!」
 田西さんは、船長命令をだすと、きんきゅうひなん用のサイレンのボタンを押しました。 ウイーン、ウイーンと警報が鳴りだしました。
 それから、うしろをふりかえると、デッキにいる藤壺さんと矢古さん、それとボランにむかって、
「そこにいたらあぶないです。はやく船室にもどりなさい」
と、大声でどなりました。
 船長命令は船の上ではぜったいです。だれも、さからってはいけないことになっていました。
 矢古さんとボランは、すぐに船室にもどってきましたが、藤壺さんだけはデッキから船室にもどろうとしません。
 それどころか、何かに取りつかれたように、
「ふかひれだ!」
と、さけびながら、ロープを手にまきつけ、船から海に身をのりだしていました。
 手にしたほうちょうで、海面からでているサメの背びれを、切りとろうとしていたのです。
「藤壷さん、なにをやっているのですか。命令に従ってください」
 ホホジロザメのこわさを知らないのか、それともあまりの食欲に理性を失っているのか、藤壺さんは、やめようとしません。
 田西さんが、いくら、
「藤壺さん。早くこっちにもどってください」
とよびかけても、藤壺さんは、ふかひれ取りをやめません。
「まったく、藤壺さんときたら!」
 田西さんは、舌うちをしました。
「茂津さん、そうじゅうをおねがいします」
 友達です。 ほうっておくわけにはいきません。
 田西さんは、そうじゅう席から、デッキにでてゆこうとしました。

 ガクン。ガリガリ。
 大きなゆれが船をおそいました。サメが船に体当たりしてきたのです。
 あまりに大きなゆれだったので、あやうく、田西さんは、海に放りこまれるところでした。あわてて、手すりにしがみつきました。 
 田西さんはデッキに身をふせ、そして、よつんばいになりました。また船がゆれていて、海にふり落とされてはいけないからです。
「藤壺さん、だいじょうぶですか!」
 田西さんは、大声でさけびながら、顔を上げました。
 びっくりし、心ぞうがとまるかと思いました。
 デッキに上半身をのりあげたサメが、大口をあけて、ひっくりかえっている藤壺さんを食べようとしていたのです。
 藤壺さんとサメとのきょりは、わずか数十センチしかありません。

 サメの大口は、まるで、大きなほら穴です。スッポリと、大人の一人くらい楽にはいりそうです。その上、ナイフのようにするどい歯が、ノコギリのように生えているのです。
 あんな大口にのみこまれてガブリとやられたら、からだはかんたんにまっ二つになってしまうでしょう。


                                               (つづく)



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by spanky2011th | 2011-08-21 11:32 | 長編童話 ふかひれスープの冒険

新しい、いまの季節にあった服が必要だ

「法律はどこまで正義なのか! 新しい、いまの季節にあった服が必要だ。」 

 私の基本的な政治経済体制観は「厚ければ薄着になり、寒ければ厚着になる」という程度のものだ。自由主義も、社会主義も、一長一短があり、そのときどき、その国々の事情により、着替えるべきものだと信じている。
 資本主義・自由主義の大国アメリカは、いわば「夏」。広大な大地があり、そこに住む人間は、ゆたかな大地の恵みを好きなだけ受けることができた。いまのアメリカではなく、開拓時代のアメリカの話だが。自由……その基底部にも、「多くの人が幸せに暮らせる」というのがあったはずだ。苦労して開拓すれば、開拓しただけの報酬があるのだ、という信念があったといえる。
 広大な大地に滅茶苦茶掘って、運が良ければ、チャップリンの「黄金狂絵時代」も、「ジャイアンツ」のように石油を掘り当てることもできた。
 しかし、アメリカン・ドリーム信仰の陰には、こんな悲劇も隠されているのだ。

 インディアンとの死闘の末、手に入れた広大な牧草地帯。そこに、牛を連れ回しては食事をさせ、牛を育て、それを北へ連れて行って売りさばいては生計をたてるカウボーイたちがいた。祖祖父も、祖父も、父も、インデアンとの死闘をくりひろげた。それこそ命をかけての死闘の末に手に入れた牧草地帯だった。これはカウボーイたちの共有財産だった。
 ある日、政府がかってに「柵を立て、そこを耕かしたら自分の土地にしてもいい」という法律を作ってしまった。それはそれでかまわない。ただ、困ったことがあった。かならず移住してきた農民は、共有財産の一番いいところで、農耕を始めるからだ。ほっといても、いい牧草がなる肥沃な土地だ。その土地を手に入れるため、父も、祖父も死闘をし、中には命を落とす者たちもいたというのに、その場所に柵を立て、牛が行き来できないようにし始めたのだ。
 後から来て、苦労もしないでおいしい蜜だけ吸おうというのだ。
 カウボーイたちは、その農家へ出向き、ここに柵を立てられたら、自分たちの死活問題だ。お願いだから、別の土地へ移動してくれないか、と頼み込んだ。
 なんども対話を求めた。何度も説得を試みた。カウボーイの共有財産の牧草地以外を開拓し、畑を作り、種を撒くというのなら、気のいいカウボーイたちは協力を惜しまないつもりでいたのだ。
 しかし、農家は対話を受け入れない。農家は法律を盾に移動してくれない。
 困り果てたカウボーイたち。自分たちの先祖たちが命をかけて手に入れた牧草地帯を守るためだ。すこし、手荒いことをして、移動してもらおうじゃないか。仲間との話し合いがきまった。
 すこしずつ、嫌がらせをすることにした。
 農家に流れ者が一人住み着くようになった。なんでもウワサでは、農家の妻が色仕掛けで、流れ者をたぶらかしているという。流れ者は、あの女房に横恋慕しているらしい。
 ある日、カウボーイたちは、そのならず者によって、ほとんど銃殺されてしまう。彼の名は「シェーン」という、早撃ちで有名な殺し屋だったのである。

 映画「シェーン」も別の角度から見ると、こんな物語になる。なぜ、カウボーイの共有財産に配慮した法律をつくることができなかったのか。法律が作られることにより、不幸な人々が製造されてしまう。
 最近、法律により、不幸な人たちが作られているのではないか。そんな気がしてならない。

 グローバリズムが行き渡った現在は、「苦労しても報酬がない」時代へ突入したといえる。逆を言えば「ボタン一つで大もうけできる」時代だといえる。ボタン一つで儲ける人々になるには、資格が必要だ。

 イギリスの暴動、アメリカの財務問題、日本の円高・デフレ。アフリカの飢餓……、根っこはみな同じだ。
 とにかく、もう今の経済体制では限界だ。
 新しい、いまの季節にあった服が必要だ。お願いだ、経済や、社会学の専門家さんたちよ。私たちが希望を持てるシステムを提示してくれ。

 中国との尖閣諸島問題、韓国との国境問題、海底に眠るメタンハイドレードやメタンガス、レアメタルの奪い合い……、方針なき外交、国内経済の閉塞感……。
 終戦記念日が近いこともあり、テレビでは特番がいろいろある。しかし、なんとなく、「第二次太平洋戦争」の前日という気分がしている。


 アメリカの第二の国歌といわれている「アメイジング・グレース」がききたい気分だ。イギリスの奴隷商人だった人が牧師になり、その人が作ったといわれている名曲だ。





それと、さいきんのお気に入りの曲「Rolling in the Deep」 by Adeleも。




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by spanky2011th | 2011-08-14 20:49 | 世相 妄想随談(音楽付き)

ふかひれスープのぼうけん(3)

3
 藤壺さんは、港をでていくコンチキ2号の、いつもの場所にすわりこむと、中華なべとほうちょうの手入れをはじめました。
 いつもの場所というのは、デッキのうしろのところで、ここに右から、ボラン、のっぽの藤壺さん、ずんぐりむっくりの安光さん、やせっぽちの矢古さんの順で、すわることになっていたのです。
 高校で理科の先生をしている矢古さんは、出航まぎわにかけこんできていました。安光さんが高校に電話をかけたら、「父があぶない」とウソをついて、すっとんでやってきたのでした。
 矢古さんは、あたりを見回し、そうじゅう席に、船長の田西さん、大工の茂津さん、田西さんの一人むすこのひろしのすがたをみとめました。
 小学四年生のひろしは、下校とちゅうでぐうぜん田西さんたちに会ったので、パパの田西さんに「船にのるぞ」といわれて連れてこられたのです。
 矢古さんが、
「あれっ? 桑形さんのすがたが見えないけど、もう、寝に、しん室にはいったのですか」
と、聞きました。
「いいえ。桑形さんは犯人をおっかけているさいちゅうらしく、連絡がとれなかったのです」
  藤壺さんが、
「それはちがうとおもいます。どこかの木かげで、グースカゴーゴー、すさまじいいびきをかいて、ねているにちがいありません。でも、あのいびきが聞こえないと、なんか、物足りないですね。」
 ざんねんそうに答えました。 桑形さんというのは、コンチキ2号の常連乗りくみ員のひとりで、けいさつ官をやっています。
 だまって、つりざおをのばしたり、リールをセットしたりしていた安光さんが、だいたい準備できたらしく、
「さあて、いっちょう、この安光さまのつりの腕前をお見せるとするか」
 安光さんが、うれしそうに、うでをさすりました。あとは、つりのしかけをセットするだけです。
「さあ、なんでもつってあげますぜ。藤壷さん、なにをつってほしいんだか、えんりょうせずにいいなせえ」
といいました。
 のんびりと中華なべをみがいていた藤壺さんは、のんびりした口調で、
「ふかひれスープ用のふかです」
と、あたりまえみたいな顔でいいました。
「ふかひれスープ用のふか?」
 安光さんは、いっしゅん、ポカンとしてしまいました。
「ふかっていうと、あのサメ科の大型のやつですか」
 おどろきの声をあげた矢古さんは、古ぼけたさかな図かんから目をはなして、藤壺さんの顔をびっくりまなこで見ました。
「はい。そうです」
 藤壺さんが、とんでもないことをいいだしたので、安光さんは、困ってしまいました。
「サメはだめだ。まけて、マグロとか、カツオとかにしとけよ」
「いやです。ふかといったら、ふかなのです。他のものではダメなのです。」
 藤壺さんは、ダダッ子みたいに、きっぱりといいました。
 なにを思ったのか、矢古さんはさかな図かんをペラペラめくると、しきりに、うなずきだしました。
「へえ。サメというのは、ずいぶん、種類が多いのですね。それに、人類が生まれる前から、いたのですか。なになに。ふかひれスープ用のふかというと、ホシザメ科のヒラガシラなんかが有名なのですね」
 矢古さんは、サメにきょうみをもったらしく、しきりに、図かんのページをめくっては、「なるほど」「へえ」「すごす」と、連発していました。
 藤壺さんは、目をとじると、白い湯気をたてているふかひれスープを思い浮かべました。そして、におい、味、舌ざわり、歯ごたえなどを、思い出しては、
「ふかひれスープにも、ランクがありましてね。一番上が、アメ色に煮込んだもの。そのつぎが、かにの卵やとり肉のすり身などと煮込んだもの。そして、スープにひれが浮かんでいるだけのものという順です」
と、説明しだしました。
「わたしは、その一番上等なものをつくり、みんなにごちそうしたいのです」
 ほんとうは自分がいちばんたべたいのに、藤壺さんは、そういいました。
 それから、たてつづけに、そのふかひれスープがどれほどおいしいものなのか、ことこまかく話し出したのです。
 安光さんと矢古さんは、藤壺さんの話を聞いていて、つばがたまってくるのを感じました。
 つばをゴクンとのみこむと、矢古さんがポツリと、
「うまそうだなあ」
と、つぶやきました。
 安光さんも、つばをのみこむと、矢古さんとおなじことをつぶやきましたが、身ぶるいをすると、あわてて、
「だめ、だめ。わしは、女房と子どもたちを愛しているのだ。あいつらのためにも、ふかつりなんて、まっぴらごめんだ」
と、きっぱりことわります。
「いつもは安光さん、つりのためなら、いのちはいらない、といつもいっていたではないですか。あれはウソなのですか?」
 藤壺さんは、なんとか、サメをつってもらおうと説得にかかりましたが、安光さんは、石のようになって、ウンともスンともいわなくなってしまいました。
「安光さん、おねがいしますよ。ふかがないと、悲しいふかひれスープになってしまいます。」
 泣き落としにかかりました。
「………」
 安光さんがこうなったら、もうだめです。藤壺さんはあきらめるしかありません。
 でも、だめだとわかると、よけいにたべたくなってくるらしく、空に浮かんでいる雲が、アメ色のふかひれに見えてきました。
「あ~あ、のみたいなあ~」
 藤壺さんはためいきをつきながら、サリーの下からでている足をブラブラさせ、かかとで船のよこをドンとならしました。
「あ~あ、のみたいなあ~」
 ドン
「あ~あ、たべたいなあ~」
 ドン
 まるで歌でも歌っているみたいに、藤壺さんはなんども同じことをつづけました。
「安光さん、この図かんによると、人をおそうサメは、おもにオオメジロザメとイタチザメで、きょうぼうなホホジロザメはもっと沖のほうじゃないといないみたいですよ。それに、きょうぼうなサメよりも、おとなしいサメの方が多くて、ジンベイザメのように、10メートルちかくの大きな図体でも、プランクトンしか食べないようなのものもいるのですね」
 矢古さんは図かんをひらいて、サメについて安光さんにしゃべりだしました。矢古さんは、つるのは自分でないから、実験用に、それにふかひれスープ用に、一匹、つりあげてもらいたくなっていたのです。
 そのときです。ずっとおとなしくしていたボランが、きゅうに、
「ワン、ワン、ワン」
と、はげしくなきだしたのです。
「どうした、ボラン?」
 藤壺さんが足をデッキにあげて、こうふんしているボランをだきよせました。
「ワ、ワ、ワッ!」
 ふるえる声で、安光さんがどなりました。


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by spanky2011th | 2011-08-14 18:44 | 長編童話 ふかひれスープの冒険

ふかひれスープのぼうけん(2)

 安光さんはちようどそのころ、50CCのオートバイに、たくさんの野菜をいれた段ボール箱を荷台に積みこんでいるところでした。
 安光さんの商売は、駅近くのうら通りにある、小さなやおやさんです。
 やおやさんだから、安光さんは、野菜や果物のことは、いちおう知っていますが、それ以上にくわしく知っているのがさかなのこと。じつは、この安光さん、とにかく、さかなつりがいちばん好きなのです。
 ですから、ガラガラ台車をおしてやってきた藤壺さんが、いまにもオートバイを走らせようとしていた安光さんに、
「安光さん、つりにいきませんか~」
 と、声をかけたとき、安光さんのが目がきらりと輝き、まよわずに、
「いく、いく、いくぞ。ぜったい、いくぞ」
と、返事をしました。
 そして、オートバイからとびおりるや、やおやの前かけをはためかせ、
「わーい、つりだあ!」
と、大声でピョンピュンとびはねたのも、むりがありません。
 そのようすを見た安光さんの奥さん百合子さんは、とてもあわてました。
「あんた。ダメですよ。午後の配達の仕事はどうするのですか」
 百合子さんは、目を三角にしておこりましたが、つりのことで頭がいっぱいになってしまった安光さんには、もう、なにも聞こえていません。
 得意先のレストランやラーメン屋などに野菜をくばる仕事がまだ残っているのに、ねごとみたいに、
「つりだ、ワッショイ、つりだ、ワッショイ」
とくりかえしながら、安光さんは、店の奥へはいっていくと、つりざおやアイスボックスをひっぱりだしてきました。
「あなた! どうしてもいくというなら、今夜の夕飯は抜きですよ!」
 百合子さんがいくらどなっても、藤壺さんと安光さんはちっとも気にしません。
 二人は楽しそうに、スタスタ、ガタガタ歩きはじめました。二人ならんで歩いているすがたは、とてもへんてこです。藤壺さんはやせっぽちの背高のっぽで、着ているものはカーテンのサリー。そして、安光さんは、ずんぐりむっくりののふとっちょのチビで、「安光やおや店」の前かけをしているのです。
「ふー、まったく、こまった人たちだわ」
 子どもの頃から知っている二人、いや、困った人たちの仲良しグループをよく知っている百合子さんは、ふかいため息をつきました。
 それにしても、あの仲良しグループは、むかしから、とてもへんてこでした。そして、いまも、とてもへんてこです。とてもいい人たちなのですが……。
 百合子さんは、あきらめて、仲よしグループの奥さんたちに、連絡網で連絡をすることにしました。受話器を取ると、
「もしもし、田西さんですか。こちら安光ですけど、藤壷さんと、うちの安光がたぶんそちらへ向かうと思います。気をつけてください。えっ、ご主人、風邪でねているのですか。それは困りましたね。きっと、出て行ってしまいますね。わかりました。私は久留美さんのほうへ連絡します。」

 そんなこととは知らない二人と一匹は、駅の北がわにある森下団地へむかいました。
 森下団地の7号棟にくると、二人と一匹は、階段をのぼり、317号室の呼び出しベルをならしました。
 ドアのわきには、「田西今吉」という表札がでています。
「なあ、船長、いるかな?」
 平日は、われらが船長田西さんは、洋服を作る会社で副業の仕事に出ているはずなのに、
「います。ぜったいいます」
 藤壺さんは安光さんにきっぱりといいきりました。そして、藤壷さんがそういうなら、きっといるのだろう、と安光さんはおもうのでした。子どもの頃から、不思議と藤壷さんの勘はよく当たったのです。
 もう一度ベルを鳴らそうとしたとき、ドアが開いて、田西さんの奥さんのモモ子さんが顔を出しました。
「ひさしぶりです、モモ子さん。ところで、船長、いますか?」
 藤壺さんがたずねると、奥さんは、小声で、
「いることはいるのですけど……。でも、風邪がひどくて、ねこんでるのです。でも、どうして、いるとわかったのですか?」
 首をひねりながら、不思議そうに聞き返しました。モモ子さんにとって、子どもの頃から、藤壷さんは大きな謎でした。そして、いまも大きな謎のままでした。
「ただ、なんとなく……、いるよ~うな気がして……」
 藤壺さんが間のびした声で答えたので、奥さんはプーッと吹き出しました。
「プーッ。あら、いやだー。」
 奥さんが笑ったのには、わけがあります。つい、二、三分前に姿を現した大工の茂津さんも、やってきたときに藤壺さんと同じせりふをいったからです。
「茂津さんもきていますよ。さあ、さあ、どうぞ。でも、今回だけは、出航は駄目ですよ。それと安光さんは、お茶をのんだら、お家へ帰ってくださいね。」
 安光さんは、もう手配が廻っているのか、とおもい、ちょっと女房同士の連絡網の恐ろしさを感じました。
 田西さんは会社を休んで、ふとんでねていました。
「おう、どうした」
 ふとんのわきにドスンと座りながら、安光さんが田西さんのおでこに手をあてました。
「熱がないな。こりゃ、仮病だな」
 いきなりそんなこといわれて、ふとんの中の田西さんは、
「仮病はひどい。高熱をだして、つい、さっきまで、うなされていたんだから」
と不服そうにこたえました。
「ねてなさいといっているのに、よくなったから起きる、といってきかないのです。今朝なんて、四十度をこえる熱を出していたのですよ」
 新しくきた二人に、お茶をだしながら、奥さんがぼやきました。
 船の設計図とにらめっこしていた茂津さんが、
「モモ子さんの命令にはしたがうものっスよ。船長は、あんなきれいな奥さんに、結婚してもらえただけでもありがたいと思わなくちゃ、バチがあたるっス。」
 ボソッとつぶやきました。茂津さんは大工さんですが、自分では日本一の船大工だと思っていました。
「あら、そんなこというと、久留美さんが気を悪くしますよ。久留美さんの方が、私より、十倍きれいなんですから。」
「そんなことはないです。久留美さんが夏に咲くひまわりだとしたら、モモ子さんは春咲く桃の花、梅の花、桜の花です。美の種類がちがいます。久留美さんが大型バイクにまたがっているところはとても美しいです。でも、こうやってかいがいしくご主人の世話をやいているところは想像できません。美の種類がちがうのです。私はこっちの美の方が心を打ちますね」
 藤壺さんもつけくわえて、そういったものだから、奥さんのモモ子さんは、顔を真っ赤にして、キッキンへかけこみました。
 茂津さんと藤壺さんの話は聞こえないふりをして、田西さんは、ふとんからからだを起こました。
「ところで、ふたりそろってやってきたからには、なにか、悪だくみがあるのではないですか」
 田西さんがそうたずねると、藤壺さんは、
「じつはですね、船長。これから、つりにいこうと思うのですが、船を出してはもらえないでしょうか」
と、いいました。
 藤壺さんの提案をきいた田西さんは、ガバッとふとんをはねとばし、とびおきました。そして、さっさとパジャマをぬぎすてると、船長服に着がえだしたのです。
 「こっちの美の方が心を打ちますね」といわれて、ごきげんなモモ子さんは、おやつ用のババロアケーキを、三人のお客さんに出そうとしていました。
 ところが、着替えている田西さんのようすを見て、
「あなた。ばかなことしないでください。また、熱を出てしまいますよ」
と、モモ子さんは、ひっしにとめました。
 でも、「船にのる」の思いにとりつかれてしまった田西さんには、もう、モモ子さんのことばなんか、聞こえていません。
「おもかじいっぱい、船だ、船だ、ともかじいっぱい、さあ、出航だ」
と、田西さんはつぶやきながら、双眼鏡や海図(海の地図です)、マドロスパイプなどのバッグにつめこみはじめました。そして、
「では。茂津さん、藤壺さん、安光さん。ちょっくら、海にいきますか」
と、元気な声でいいました。
 田西さんは、白いぼうしをかぶると、ひっしに止めようとしているモモ子さんに、
「夕飯のおかずは取ってきてやるからな」
と、いい残すと、でかけてしまいました。


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by spanky2011th | 2011-08-14 18:25 | 長編童話 ふかひれスープの冒険