<   2012年 04月 ( 6 )   > この月の画像一覧

創設者の志を口に出さない松下政経塾生たち

 昨日の東京新聞の投稿欄に、いまの野田総理の評価を、天国にいる松下幸之助に問う投書が載っていた。そして、消費税を上げようとしているのは、松下さんの考えなのかと問いかけていた。
 これに、お答えします。わたしは、経営の神様の本を熟読しているものではないが、それでも、耳学問で入ってくる知識で知っている範囲でも、そんな考えがなかったのは明白。
 「松下幸之助」「税」だけでグーグルしてみれば、一目瞭然のはず。松下幸之助の基本的な考え方は、会社経営。その根幹の考え方は、税を毎年必要な分だけあつめ、すべて使い切る今の体系を止めさせること。彼が生きているとき、税金を毎年使い切らずに1割程度貯金し、それを別の形で活用すれば、税金を無税にすることは可能だ、と提案したのを覚えている。
 無税はともかくとして、彼は、この提案で、経済評論家たちから凄まじい嘲笑をあびた。バブル期で、今の日本の姿をだれも想像していなかった時代のことだ。
 野田総理は、松下政経塾の一期生ということだが、彼の口から、一度でもこんな考えが出されたことがあるだろうか。いな、政経塾出身者からでも聞いたことがあるだろうか。
 松下氏はさすが経営の神様、国家というのを会社としてみたて、日本の一番まずい点をしっかり押さえいる。
 組織というのは、予算が1兆あれば、それに見合うような規模になっていくのである。翌年、それを一割削るのは、大変なことなのである。その1兆にぶら下がって いる人がたくさんいるからだ。
そして、その組織は、一兆円プラスαを。来年度要求するようになる。これを戦後からずっとつづけてきて、日本の国家機構は、ふくれにふくれあがってしまったのだ。
 たとえば、10人の公務員がいたとする。一人一人が、その年に必要な予算を請求し、それを獲得したとする。たまたま、仕事の関係で、1人はその半分しか使わないで済んだとすると、その人は、それをすべて年度内で無駄遣いをしてでも、使い切ってしまう。そうしないと、来年度は予算を削られてしまうからだ。そうすると、来年度は、自分が困ることになる。ある人は、たまたま、突発事故かなにかで、予算オーバーしてしまう。 10人のあいだで融通し合えば十分なのに、それをしないのだ。そして、来年の予算請求は、本年プラスαの数字を出していくのだ。
 ここの仕組みを変えるのが一番の眼目なのだ。
 イオングループの御曹司の政治家が、とつぜん、思いつきで、国家公務員の削減を打ち出してきたが、こんなことで、ふくれあがった組織が縮小できるわけがない。
 あるのは、本来の意味でのリストラ、組織再構築であろう。公務員の首を切らずに、組織を再構築するしかない。そして、使い切らずに、大枠の予算の中で、なんとかやりくりする仕組みを作るしかない。
 それにしても、政経塾の塾生たちには失望させられる。口先ばかりで、志が低すぎる。そもそも、政経塾に入ったのも、政治屋になりたかったので、そのための手段として、学びながら給料をもらえる政経塾にはいったのではないのか、と疑りたくなるくらいだ。

[PR]

by spanky2011th | 2012-04-20 11:55 | 世相 妄想随談

創設者の志を口に出さない松下政経塾生たち

 昨日の東京新聞の投稿欄に、いまの野田総理の評価を、天国にいる松下幸之助に問う投書が載っていた。そして、消費税を上げようとしているのは、松下さんの考えなのかと問いかけていた。
 これに、お答えします。わたしは、経営の神様の本を熟読しているものではないが、それでも、耳学問で入ってくる知識で知っている範囲でも、そんな考えがなかったのは明白。
 「松下幸之助」「税」だけでグーグルしてみれば、一目瞭然のはず。松下幸之助の基本的な考え方は、会社経営。その根幹の考え方は、税を毎年必要な分だけあつめ、すべて使い切る今の体系を止めさせること。彼が生きているとき、税金を毎年使い切らずに1割程度貯金し、それを別の形で活用すれば、税金を無税にすることは可能だ、と提案したのを覚えている。
 無税はともかくとして、彼は、この提案で、経済評論家たちから凄まじい嘲笑をあびた。バブル期で、今の日本の姿をだれも想像していなかった時代のことだ。
 野田総理は、松下政経塾の一期生ということだが、彼の口から、一度でもこんな考えが出されたことがあるだろうか。いな、政経塾出身者からでも聞いたことがあるだろうか。
 松下氏はさすが経営の神様、国家というのを会社としてみたて、日本の一番まずい点をしっかり押さえいる。
 組織というのは、予算が1兆あれば、それに見合うような規模になっていくのである。翌年、それを一割削るのは、大変なことなのである。その1兆にぶら下がって いる人がたくさんいるからだ。
そして、その組織は、一兆円プラスαを来年度要求するようになる。これを戦後からずっとつづけてきて、日本の国家機構は、ふくれにふくれあがってしまったのだ。
 たとえば、10人の公務員がいたとする。一人一人が、その年に必要な予算を請求し、それを獲得したとする。たまたま、仕事の関係で、1人はその半分しか使わないで済んだとすると、その人は、それをすべて年度内で無駄遣いをしてでも、使い切ってしまう。そうしないと、来年度は予算を削られてしまうからだ。そうすると、来年度は、自分が困ることになる。ある人は、たまたま、突発事故かなにかで、予算オーバーしてしまう。 10人のあいだで融通し合えば十分なのに、それをしないのだ。そして、来年の予算請求は、本年プラスαの数字を出していくのだ。
 ここの仕組みを変えるのが一番の眼目なのだ。
 イオングループの御曹司の政治家が、とつぜん、思いつきで、国家公務員の削減を打ち出してきたが、こんなことで、ふくれあがった組織が縮小できるわけがない。
 あるのは、本来の意味でのリストラ、組織再構築であろう。公務員の首を切らずに、組織を再構築するしかない。そして、使い切らずに、大枠の予算の中で、なんとかやりくりする仕組みを作るしかない。
 それにしても、政経塾の塾生たちには失望させられる。口先ばかりで、志が低すぎる。そもそも、政経塾に入ったのも、政治屋になりたかったので、そのための手段として、学びながら給料をもらえる政経塾にはいったのではないのか、と疑りたくなるくらいだ。

[PR]

by spanky2011th | 2012-04-20 11:55 | 世相 妄想随談

第二章 忍びよるマンホールボーイ(2)

約210枚の子供向け作品です。福島原発後の格差社会を舞台にしました。A小学生新聞の公募に出したものですが、審査員の目には留まらなかったみたいなので、ここで、少しずつ公開していきたいと思っています。
 マンホールボーイの都市伝説を創作してみました。




ファミッコ伝説




第二章 忍びよるマンホールボーイ(2)

 昨日の雨のせいで、やはり、水がひどく冷たい。でも、しばらくつかっていると、なれてくる。
 奈波が、手すりにつかまって、
「冷たいね」
と、いいながら、ゆっくりとおりてきた。
「奈波は、水の中に沈むのは、できるんだよな」
「うん」
「ただ、浮かんでるのは?」
「息、つづかないけど、だいじょうぶ」
「バタ足は?」
「うーん」
「じゃあ、バタ足からやるか」
 拓也は、プールのふちにつかまらせて、バタ足をやらせることにした。
「見本見せるからな」
 まずは、自分でやってみせてから、やってみな、と奈波にやらせてみた。
 ひどいのなんのって。
 ただ、ばたばたと水しぶきを上げているだけで、ちっともバタ足になっていない。
 でも、どうなおしたらいいのか、わからない。
「奈波、じょうず。じょうず」
 おだてて、とにかくたくさん練習させよう。
「じゃあ、次は、お兄ちゃんが手を引っ張ってあげるから、泳ぎながら、バタ足をやってごらん」
 拓也は、奈波の手をつかむと、ゆっくりとバックしていった。
 息つぎが上手にできないらしく、ときどき水から顔を出して息をし、水を飲み込んではむせている。
 プールの中ほどに来たとき、すごい水しぶきを上げながら、クロールでやってくる男の子がいた。
 当人はまっすぐに泳いでいるつもりなのだろうが、泳ぐのに夢中で、周りのことが見えてないようだ。このままだと衝突しそうだ。
 拓也は、ゆっくりと、その子のコースからはずれようとした。
 きゅうに、拓也がコースを変えたから、背後から泳いできた子と拓也はぶつかってしまった。
「ごめん。ごめん」
 ぶつかった子は、一度プールに立つと、また、別の方へ泳いでいってしまった。
「きゃー」
 奈波の叫び声がした。
 振り返ると、さっきのクロールで泳いできた子が、奈波の足にしがみついている。
 ゆっくりと落ち着いて立ち上がればいいものを、その子も泳ぎの初心者らしく、あわてふためいていて、二人で溺れかけていた。
 拓也はあわてて、助け出そうと、奈波に手を伸ばした。
 パニック状態の奈波が、すごい力で拓也にしがみついてきた。きゃー、きゃー叫びながら、バタバタと暴れるから、バランスを崩し、拓也も倒れ込んでしまった。
 矢沢先生があわてて飛び込んできた。そして、奈波を抱え上げると、プールサイドにおしあげた。
 コンクリートの上に横たわった奈波が、まるで何かに取り憑かれたかのように、ブルブルと体をふるわせ、
「殺される。マンホールボーイに、殺される」
と、つぶやいていた。ひきつけを起こしているみたいだ。
 自分の妹とは別人のように思えた。拓也は、こわくなってきた。
 矢沢先生も、奈波の様子が変なので、
「野口。保健室の谷口先生を呼んできてくれ」
と、拓也にたのんだ。
 拓也は、すっとんで、保健室へ向かった。
「先生。プールにすぐ来てください」
 保健室の谷口先生も、拓也のあわてぶりに、なにか、とんでもないことが起きたのに気がついたのだろう、すぐさま救急箱を手に持つと、走り出した。
(このまま、奈波が死んでしまったらどうしよう。どうか、死なないで……)
 拓也は、走りながら、そんなことばかり考えていた。
 プールに戻ると、人垣ができていた。
 その中で、矢沢先生が奈波を抱きかかえて、
「もう、だいじょうぶからな。こわがることは、もうないんだぞ」
と、話しかけていた。
 奈波が、
「先生、こわかったよお。マンホールボーイが、奈波の足にしがみついてきたの」
と、しゃべっていた。
 普段、見なれた奈波にもどっていた。
 男の子に足をつかまれた奈波は、マンホールボーイに襲われたものと思ったらしい。
「マンホールボーイなんて、いなかったぞ」
「ううん。いたの。あたし、水の中でちゃんと見たの」
 矢沢先生は、教師というより、たよりになるお父さんみたいだった。
 興奮がおさまっても、奈波は、自分の足にしがみついてきたのは、マンホールボーイだったと、いい張った。
「こわかったんだな。谷口先生も来てくれたから、もう、だいじょうぶだ」
 保健室の谷口先生は、奈波を保健室へ連れて行った。
 ベッドに寝かされた奈波は、ただ、ぼーっと横になっていた。
 しかたなしに、拓也も保健室で過ごすことにした。
「マンホールボーイ? 保健室にいると、いろいろなうわさ話や怪談話が、耳に入ってくるけど、初耳ね。新しい型の都市伝説みたいね」
 谷口先生は、そういうと、スマホをいじりだした。
「いま、検索かけてみたけど、変なバンド名で一件引っかかっただけで、それらしいの、出てこないわね」
と、いう。
「先生。なんで、奈波、あんな風になってしまったんですか」
「こわい、こわいと思っている所へ、足を引っ張られたから、引きつけのような症状が出たのよ。
 みんな、心を軽くてみているのよね。
 以前読んだ本だけど、冷たいコインを腕に乗せて、催眠術で、熱く焼けたコインが乗っていると暗示をかける実験をしたら、本当に、やけどと同じ症状がでたというの。
 『心』というのは、すごく、複雑で、いまだに謎だらけなのよ」
 ごく当たり前の「心」という言葉が、拓也には、とても新鮮に感じた。
 「心」がやけどを引き起こすことができるのなら、「心」が引きつけを起こすこともできるように思った。
 あまりに当たり前すぎて、「心」のことなど考えたことがないことに、拓也は気がついた。
 それにしても、「心」とはなんなんだろう?


[PR]

by spanky2011th | 2012-04-16 19:31 | 長編児童文学 ファミッ子伝説

第二章 忍びよるマンホールボーイ(1)

約210枚の子供向け作品です。福島原発後の格差社会を舞台にしました。A小学生新聞の公募に出したものですが、審査員の目には留まらなかったみたいなので、ここで、少しずつ公開していきたいと思っています。
 マンホールというのは、東京の闇のような気がする。マンホールのふたのデザインも、結構へんてこなものがあって楽しい。
 とくに、都会のマンホールは、巨大なプールにつながっているようで、一度、探検してみたい気がする。




ファミッコ伝説




第二章 忍びよるマンホールボーイ(1)
「どうしても、つれていかなくちゃだめなの」
 拓也が、母親にそう不平をいうと、
「おねがいだから、泳ぎ、奈波に教えてあげてよ」
「でも、水、すごく冷たいはずだよ。だって、昨日の雨、記録的だったんでしょ」
「だいじょうぶよ。水は冷たくても、きょうも四十度近くまで、気温があがるって、天気予報がいってたから」
 母親は、学校のプールへつれていって、泳ぎのできない妹に、泳ぎ方を教えてあげてくれ、というのだ。
 妹の奈波は、すでに、その気になっている。
「時間がないから、ママはいくわよ」
 お願いね、というと、母親は玄関を開けて、パートへ出かけてしまった。
 拓也は、しかたなしに、きょうはカード遊び、できなくなったことを告げるために、友だちの翔太のところに電話をかけることにした。
「そうか。ざんねんだな。でも、しかたないよ。しっかり、教えてあげるんだな」
「うん。でも、夕方は、かならず行くからね」
「楽しみにしてるよ」
 午前中と夕方の涼しい時間帯が、拓也たちの遊び時間だ。
 昼間は、熱中症がこわいので、みんな、外にはでない。
 でも、午前と夕方では、楽しさがダンチにちがう。夕方は、塾にいく子が多いので、あまり人が集まらない。人が集まらないと、やはり面白くない。
「奈波、9時にいって、11時には帰ってくるけど、それでいいよな」
「うん。夏休み、終わるまでに、25メートル、泳げるようになるかな。」
「それは、奈波の努力次第さ。努力すれば、泳げるようになるし、努力しなければ、泳げるようにならない。それだけさ」
「お兄ちゃんの、そのいいかた、あたし、きらい」
「きらいでも、かまわないさ。ほんとのことだもの」
 遊びがフイになったのが不満で、拓也は、八つ当たり気味に、奈波をぞんざいにあつかった。
 拓也の家は、8階建てマンションの3階にある。
 午前中は、まだいいのだが、昼を過ぎた頃から、ぐんぐんと熱くなりだし、夕方が蒸し暑さのピークになる。
 茶色いマンション全体が、熱を帯てしまうのだ。
 拓也と奈波は、昼からは図書館へ行き、そこでお弁当を食べ、勉強をしたり、本を読んだりして過ごすことにしていた。
 そして、涼しくなりだした夕方、また、友だちと遊び、そして、家へ帰るのだ。
 クーラーはあるにはあるのだが、クーラーはなるべく使わないようにしている。
 昼間は、仕事をしている人のために、家庭ではなるべく電気は使ってはいけないことになっているのだ。
 しかし、拓也の家では理由がちがう。
 電気代がバカにならないらしい。ほかにも、いろいろなものが高くなり、節約しなくてはいけなくなったのだ。
 第一、母親がパートに出るようになったのも、いろいろなものの値上がりで、家計のやりくりがむずかしくなったからだ。 
「おい、奈波。いくぞ」
 拓也は、9時前になると、水泳パンツなどを用意して、学校へ向かった。学校のプールはタダ。
 すでに、ムシムシと暑くなりだしている。
 着替えて、水泳帽とゴーグルをつけると外へ出て、拓也は、シャワーを浴びてから、プールへ向かった。 
 ピリピリくる日差しを浴びている肌に、シャワーの水が地獄のように冷たかった。
 30人近くが泳いでいた。
 4、5年生がほとんどで、6年生は少ししか来ていないみたいだ。
「おい、野口、プールにくるなんて、めずらしいな」
 声をかけてきたのは、3・4年生のときに担任だった矢沢先生だった。
 白いパーカーをまとい、監視役として、高い所から見ている。お手伝いの高校生たちもいっしょだ。
「お早うございます。きょうは、妹の世話係です。妹を泳げるようにしなくちゃいけないんです。」
「そうか。それは感心、感心。やってみせ、やらしてみせて、ほめてあげるんだぞ。」
「なんですか、それ?」
「人にものを教えるときのやり方だよ。
 まずは自分でやってみせて、相手にやらせて、ほめてあげるんだ」
 しゃべっているうちに、そのうち奈波が出てくるだろうと思っていたのに、いつになっても出てこない。
「遅いなあ」
 拓也がそうつぶやいたのを、先生は耳にすると、
「どうかしたのか?」
と、聞いてきた。
「妹がなかなか出てこないのですよ。とっくに、着替え、終わっていると思うんだけど……」
 先生は、台から降りてくると、拓也の妹の名前を聞き、手伝いにきていた監視役の女子高生に、
「悪いけど、野口奈波ちゃん、むかえにいってくれないかな」
と、着替え室に見に向かわせた。
 拓也は、矢沢先生が好きだった。その好きな理由が、少しわかったような気がした。
 その女子高生が、女の子用の着替え室から、ひとかたまりの女の子たちを、
「さあさ。外に出て、外に出て。せっかくプールに来たんだから、泳ぎなさい」
と、追い出してきた。
 その中に、奈波もいた。みんな、奈波と同じ学年みたい。
「先生。この子たち、なんか、変なんですよー。プールに来たのに、泳ごうとしないで、着替え室のかたすみで、こそこそ、こそこそ、ないしょ話していたんですよー」
 それを聞いた先生は、しゃがみこむと、
「どうしたというのだ。先生に話してごらん」
と、たずねた。
 声をかけられた子たちはみんな、なにかにおびえているみたいだった。
 根気よく、優しい声で語りつづけていると、一人の子が、
「先生、あたしたち、マンホールボーイに狙われてるんです。だから、だから……」
 ようやく口を開いたと思ったら、泣き出してしまった。それにつられるように、ほかの子たちも泣きだす。
 プールで泳ぐのをあんなに楽しみにしていたのに、奈波も、すっかり、おびえてしまっている。
 矢沢先生は、女子高生に、
「わるいけど、監視台にのぼって、みんなを見ててくれないかな」
というと、しゃがみこんで、泣いている子たちの相手をしだした。
 拓也は、ちょっと乱暴に、妹の肩の下に手を入れて立たせると、
「泳げるようになりたいのだろう」
と、いってみた。
「うん。泳げるようになりたい。でも、マンホールボーイが水に引きずり込むんだって。あたし、こわい」
 めそめそ泣きながら、奈波がそう答えた。
「マンホールボーイって、なんだよ?」
「よく、わかんない。悪いことして死んだ男の人の幽霊だって。その幽霊が、泳いでいる人の足をつかんで、マンホールへ引きづり込むんだって。」
「だれにきいた?」
「美咲ちゃん」
「バカだなあ。幽霊なんていないんだぞ」
「でも、あちこちで、マンホールボーイが悪さをしているんだって。昨日の雨も、マンホールボーイが降らせたんだっていってたよ」
 昨日の雨では、流れ込んできた雨水で地下鉄がとまり、JRも落雷で一部でとまってしまったのだ。たくさんの人が帰宅できなくなり、大変だったようだ。
 拓也の父も、帰宅難民者の一人になったが、なんとか歩いて帰ってきたのだ。
 多摩川が氾濫するのではないかと見に行った老人がひとり、流されて死んでいた。
「でたらめに決まってるじゃないか。雨は、水分をたくさん含んだ雲が降らせるんであって、幽霊が降らせるわけじゃないぞ。
 奈波は、泳ぎができるようになりたいのだろう。だったら、練習するしかないじゃないか」
 奈波は、めそめそしながら、だまってしまう。
 泳ぐなら、泳ぐ。やめるなら、やめる。どっちでもいいから、早く、決めてもらいたかった。
「おい。野口、せっつくんじゃない。そういえば、先生の子供時代にも、口裂け女の都市伝説がはやったっけなあ」
 そういってから、先生は、自分が体験したことだといって、話しはじめた。
 街角にマスクをした女の人が立っていて、学校帰りの子供に「あたしってきれい?」と聞いてくるという有名なものだ。
 マスクをはずすと口が耳まで大きく裂けていて、おどろいて子供が逃げたりすると、追いかけてきて、カマやハサミで殺すという。
 子供時代の矢沢先生がどんな風にこわがったか、話していく。
 ある日の下校途中。電柱の所にマスクをした女の人が立っていて、おびえてしまった先生は、遠回りして帰ることにした。そしたら、なんと、家に着いたらズボンがぐっしょりとぬれていた。
 トイレに間に合わないで、おもらしをしてしまったのだった。
 こんな話を、おもしろおかしく話していくのだ。
 どこまでが本当か、疑わしいと拓也は思ったが、みんなは、目を輝かして聞いている。
「テケテケという都市伝説もあるけど、その話は、こんど、話してやるからな。
 マンホールボーイがいると思う子は、きょうのプールはなし。いないと思う子は、しっかりと準備体操してから、プールにはいること。いいな。
 先生は、みんなの安全を守るために、しっかりと監視しているから、安心していいぞ」
「はーい」
 大半の子供は、先生の話に納得したのか、プールにはいっていく。
 が、やはり、水に入る勇気がでないらしく、プールサイドでうろうろしている子もいる。
 奈波も、どうしようか、迷っている。
「奈波、どうする? プールやめて、帰ろうか。お兄ちゃんは、それでもかまわないんだぞ」
 拓也は、いまから公園に行けば、かなりの時間、遊べると思った。
「お兄ちゃん、マンホールボーイなんて、いないんだよね」
「いるわけないさ」
「もし、おそってきたら、お兄ちゃん、守ってくれる?」
「あたりまえじゃないか」
 奈波は、おそるおそるプールにはいる決意をしたみたいだ。
 拓也が先に入った。


[PR]

by spanky2011th | 2012-04-13 14:45 | 長編児童文学 ファミッ子伝説

第一章 スコールの中で(3)

約210枚の子供向け作品です。福島原発後の格差社会を舞台にしました。A小学生新聞の公募に出したものですが、審査員の目には留まらなかったみたいなので、ここで、少しずつ公開していきたいと思っています。
 自分が小学生のとき、熱心に原爆の恐ろしさを語る先生がいた。昭和四十年代の事だ。みんなの手で、原爆をなくさなくてはならない、というようなことを語るのだ。正論だと思った。でも、原爆の怖さばかりをいろいろと聞かされて、その印象が強すぎたのだろう。校庭で遊んでいても、とつぜん、空から原爆が落ちてきて、ぼく達をやきはらってしまう、という妄想にとらわれてしまい、苦しんだ事がある。
 正しい認識を持つ事は大事だ。でも、それよりも大切なのは、こうすれば抜け出せるというビジョンを語る事ではないのだろうか。キング牧師が行ったバスのボイコット闘争。そこには、バスをボイコットすることで良心を目覚めさすという目標があり、アイ・ハブ・ア・ドリームというビジョンがあった。
 自分にはまだビジョンと呼べるものがないが、それをいま模索している。


ファミッコ伝説

第一章 スコールの中で(3)

 いつしか拓也も、ほとんどのシーンを覚えてしまっていた。
「ナウシカでは、腐海の森が汚れた大地をきれいにしてくれている、とあったけど、あんなこと、あるのでしょうか? 大地をきれいにするのは、やはり、人間の科学だと、ぼくは思うのです」
「ふーん。君は、科学の進歩を信じているみたいだね」
「ええ。それに、あの汚れた大地は、巨神兵を使って世界を焼き払ったからできたと思っていたけど、どうもちがうような気がしてきたんです。もちろん、巨神兵がやったんだけど」
「というと?」
「うまくいえないんだけど、もっと、バカバカしい原因じゃないかな、と思うんです」
「君は面白いこというね。人間の愚かさというやつかな」
 おじさんは、質問上手だった。拓也もつい、のせられてしゃべってしまう。
「この雨、どう考えたって、環境破壊のせいでしょ? 
 学校の授業で、環境破壊とか、人口爆発とか、習いました。だから自然を大切にして、エコな生活をしましょう、って教わりました。
 それって、正しい答えだと思います。でも、実際は、どんどん悪くなる一方です。
 正しい答えは出ているのに、みんな、それから目をそらしている。そんな感じなんです」
 拓也は、そういいながら、同級生のある女の子の顔を思い浮かべていた。 
 携帯型のテレビゲームは、学校持ち込み禁止になっている。
 それなのに、持ってきた生徒がいたので、それがホームルームの時間に、やり玉になったのだ。
 持ってきたのは、地味で目立たない男の子だった。
 その女の子は、
「決まりなのだからどんな理由があっても持ってきてはいけない。ゲームはゲーム脳になるからいけない」
とか、きれいごとばかりいって、ゲーム機を持ってきた男の子を責めつづけたのだ。
 拓也たち男子はみな、彼が、なぜ、学校へそれを持ってきたのか、知っていた。
 放課後、彼は、入院中で退屈している弟へ持っていこうとしていた。だから、だれも気にもしなかったし、悪いことだとは思わなかったのだ。
 それどころか、彼、弟思いだな、と思ったくらいだった。
 拓也は、
(あれじゃかわいそうだよな)
と思いながら、時間が過ぎるのをだまって待ちつづけたのだ。
 そうなのだ。彼をかばうべきだったのに、それから、目をそらしてしまったのだ。
 きっと、ナウシカの時代の人々も、巨神兵は使うべきではない、と思いながら、だれもなにもいわなかったにちがいない。
「ふーん。正しい答えは出ているのに、目をそらしているか。いえてるかもしれないね。
 いわれてみれば、ナウシカも、もののけ姫も、みんな、自然の再生の力を神様みたいにあがめているけど、あれじゃ、アニミズムそのもので、人類は先祖帰りすべきだといっている感じだよな」
「アニミズムって、なんですか?」 
「木や草や鳥や虫などのひとつひとつに、神様が宿っているという考え方さ。
自分たちの利益のために自然を壊すのが悪だからといって、人間の知恵を否定すべきではないと君はいうのだね。
 ぼくもそう思うよ。
 霊とか超能力があると信じているがために、ずいぶんとひどい事件が起きてるからね。
おじさんは、そういう話にはちょっとくわしいんだ。仕事がらだけどね」
 拓也はそんなことまでは考えていなかった。ただ、正しいことは実行しにくい。ただ、それだけだった。
 そんなことを話しているうちに、雨が上がってしまった。
 その上がり方も、変だった。
 雨降り部分と、雨なし部分との境目があるような感じで、こっちから向こうへと、走り去るような感じで、雨が上がっていったのだ。
 雨がやむと、いきなり新宿副都心の高層ビルが北側に見えだした。
 そして、雲に切れ目が出てきて、そこから太陽の光がいく筋も降り注いでくる。
「あの、雲の間から落ちてくる光を、なんというか、君、知ってる?」
 おじさんの質問に、拓也は正直に、
「知らない」
と答えた。
「天使の階段というんだよ」
「素敵な呼び方ですね」
「ぼくもそう思う。君と話せて、よかったよ。じゃあ」
 男の人はそういうと、携帯電話をかけながら、急ぎ足で去っていった。
 雨でびっしょりぬれている自転車のサドル部分の水滴を手で拭うと、拓也はズボンがぬれるのも気にかけず、ペダルをふんだ。
 急いで、家へ向かったのだ。


[PR]

by spanky2011th | 2012-04-06 18:39 | 長編児童文学 ファミッ子伝説

第一章 スコールの中で(2)

約210枚の子供向け作品です。福島原発後の格差社会を舞台にしました。A小学生新聞の公募に出したものですが、審査員の目には留まらなかったみたいなので、ここで、少しずつ公開していきたいと思っています。
私は敬愛する宮崎駿大先生の「ナウシカ」には大きなショックを受けた一人ですが、それ以降、思想的にはあまり進歩が見られないのが、悲しい気がします。あまりにも安易なアニミズム、単なる自然崇拝主義者に陥ってしまっている気がしてなりません。
多いんだよね、安易なアニミズムが。とくに児童文学者には。古木に耳を寄せて、命の音が聞こえる、なんて書いて、よろこんでいる手合いが。どうして科学を批判する立場をとると、その手の安易なアニミズム主義者になるのでしょうか。どうして、テーゼ、アンチテーゼ、ジンテーゼという基本で、物事を考えようとしないのでしょうか。「***の精霊」なんてシリーズを書いてたりしている人は、安易なアニミズム主義者の最たるものだと思うんだけど、個人的に。


ファミッコ伝説

第一章 スコールの中で(2)
 一度動き出すと、止まらなくなるのだ。
 納得できる答えを見つけるまで、頭の中をぐるぐる、ぐめぐると、その疑問がかってに駆け回ってしまうのだ。
(いま、降っている雨は、ヒートアイランド現象っていうんだよ。なぜ、起きるのか。それは都会がコンクリートとアスファルトでできていて、それが夏の日差しで熱くなり、周りの空気をどんどんと熱くする。その空気が入道雲を作り出して、どっと急な大雨を降らせているのだ)
 そう心の中で、模範解答を書いてみた。
 でも、いくら、科学的には理解できても、どことなく納得できない。
 テレビでは、このような雨をゲリラ豪雨と呼んでいる。
 この数年、東京だけではなく、日本のあちこちで起きている。
 ゲリラ豪雨によって、川岸でキャンプしていた家族が押し流されたり、マンホールの中で作業していた人が突然の水に流されたりしている。
 それだけでなく、変電所に落ちた落雷で大規模停電がおきたり、地下鉄に流れ込んだ雨水で交通がマヒしたり、といろいろなことが起きているのだ。
 今年はとくにひどい暑さで、豪雨があればあるで被害が出て、なければないで、40度を超える暑さのせいでたくさんの人が熱中症で死んでいる。
 竜巻なんかも起きている。
(だれがなんといおうと、異常気象だ)
 拓也はそう思うのだが、天気予報では、異常気象の「異」の字にも触れない。
 最近10年の平均値より高いか低いかだけで、異常か異常でないかを決めているので、異常が異常でないということになっているらしい。
そこらへんも、変だと思う。
 とにかく、日本中がどこかが変だ。そう、「どこかが変だ」というのがピッタリ。

 隣で携帯電話をしていた人が電話を切ったので、拓也は、
「すみません。ケータイ貸してもらえないでしょうか。うちへ、電話をかけたいのです」
と、たのんでみた。
「おお。いいよ」
 男の人は、気軽に貸してくれた。拓也の父と同じくらいの年の人だ。
 携帯電話を借りた拓也は、
「いま、スーパーの先のビルのところで、雨宿りしている。迎えにこなくていいよ、あぶないから。公園でサッカーしていたら、空が真っ黒になったので、いそいで帰ろうと思ったんだけど、間に合わなかったんだ。
 うん。小雨になったら、帰るからね。ケータイ、親切な男の人から借りたの。じゃあ、長電話すると悪いから切るね」
と、用件を手短に母に伝えた。
 公園にいたというのは事実だけど、サッカーをしていたというのはウソだった。
 ついさっきまで、拓也は、この先の大きな公園の、藤棚の下で友だちとカードゲームをして遊んでいたのだ。
 周りには木立があって、風通しがいい。震災前なら、クーラーのきいた部屋でプレイできたというのに。
 拓也たち都会の子は、ゲリラ豪雨を何度も味わっている。だから、雲行きが怪しくなったら、遊びはやめることになっていた。
 きょうも、とつぜん、空に黒い雲がでてきたので、みんな、あわてて解散し、あわてて自転車で家へ向かったのだ。
 ぽつり、ぽつりと降り出したと思ったら、本格的にザーッと降り出すまでに10秒とかからなかった。
 拓也は、電話を切ると、ていねいに、
「ありがとうございました」
といって、携帯電話を返した。
「君はえらいな」
「えっ、なにがですか?」
「親に心配をかけまいとして、家へ電話をかけるなんて、なかなかできることじゃないよ。」
 男の人が拓也に語りかけてきた。
「ううん、そんなんじゃないんです。うちのママ、とんでもない心配性だから、安心させてやらないと、なにをしでかすか、わかんないんです。かみなりがあぶないというのに、外に出かけかねないんだもの、ホントに」
「君、やさしいんだね」
 ほめられて、悪い気はしないけど、ちょっと照れくさい。
 また、かみなりが落ちた。少し遠のいたようだった。
「ぼくたち大人がやってきたことのツケ、みんな、君たちの世代に背負わせてしまうみたいで、申しわけなく思っているんだ」
 男の人は、たたきつけるような雨を見ながら、とつぜん、こんなことを語りだした。
「この雨だって、地球を温暖化させた大人のせいだし、放射能も、危ないとわかっていたのに、便利で安いからと原発を使いつづけた大人のせいだし……、むずかしい宿題ばかりを君たちに残してしまったみたいだね。
 大人はみんな、君たち子どもにあやまるべきなんじゃないかな。
 最近、ぼくはそう思うようになったんだ」
 自分のような子供に、こんなことをいう人とは、拓也ははじめて出会った。だいたいの大人は、教訓ばかりだというのに。
「気にしないでください」
 拓也がそういうと、
「はははは。君って、大人じみてるね」
 男の人が愉快そうに笑った。
「よく、いわれます。ママなんか、かわいくないというときもあります」
「いいな、男の子は。じつは、うちにも子供が二人いて、両方とも女の子だから、父親なんて、給料運搬屋さんくらいにしか思ってない。でも、娘たちのことを思うから、いやな仕事もつづけられているんだ。」
「大人って、たいへんですね」
「ああ。なかなかたいへんだよ。ちょっと、タバコ吸ってもいいかな」
「いまどき、めずらしいですね」
 男の人は、そういうと、背広のポケットからタバコを取り出すと、ライターで火をつけた。
「まだタバコを吸っているの、このあたりではあなたくらいのものですよ、と女房からもイヤミをいわれているんだ。こうなりゃ、人類最後の喫煙者と呼ばれるまで、吸うつもりだよ」
「おじさん、腐海の森、知ってますか?」 
 とつぜん、拓也は、自分の心に芽生えた疑問をぶつけてみたくなったのだ。
「おっ、ナウシカだな。おじさんも、若い頃、何度も見たよ」
 拓也は、豪雨と落雷を見ながら、ナウシカの話をして、やり過ごすことにした。
 ナウシカというのは、宮崎駿という監督が作った「風の谷のナウシカ」のことで、父の世代の人がほとんど見ている有名なアニメ映画だ。
 拓也の父も、リアルタイムで「ナウシカ」を見た口で、宮崎作品の中で一番好きみたいで、DVDで繰り返し見ていた。

[PR]

by spanky2011th | 2012-04-02 23:37 | 長編児童文学 ファミッ子伝説