「ソフト・マシーン」を知っていますか?

70年代、イギリスに「ソフト・マシーン」というジャズ・ロック・バントがあった。カンタベリー派とも呼ばれ、ピンク・フロイドなどとも交流のあったバンドだ。
 音楽もいいが、私はそのバンド名が好きだ。科学文明信仰真っ盛りのあの頃、人間を「ソフトなマシーン」と呼んだ作家がいて、その「ソフト・マシーン」という言葉を気に入ったメンバーが自分たちのバンドの名としてつけたのだ。




 断言するが、人間は「ソフトなマシーン」なんかではない。有機的に、自立的に、共存的に生を営んでいる「独自」なもので、「マシーン」なんかではない。説明のしようがない「生命」という不思議なもので、なによりも価値のあるものだ。
 経済などが大規模化すると、どうしても組織も巨大化せざるを得ない。「メガ・マシーン」の誕生だ。効率化を考え、巨大組織は指揮系統を大切にし、指揮系統の中枢が考え、周辺はその指示に従うことを要求される。周辺はいつしか、いつでも切り捨てごめんの部品と見なされるようになる。
 この「メガ・マシーン」は一見、効率的で、よいことずくめのように思えるが、実は、悪いことずくめなのである。
 原発事故後、中曽根元総理大臣が「原発の安全性」云々と他人事のように論評しているのを聞いたとき、あいた口が塞がらなかった。日本に原発を導入するきっかけを作った当人の口から、そんな他人事の発言が出るとは思わなかったからだ。当時は、右も左も、核爆弾の開発に余念がなく、中曽根も「バスに乗り遅れるな』とばかりに、考えもなしに、原子力発電の推進を始めたのだろう。多分、核技術の進歩に乗り遅れるな、そんなレベルの発想だったのだろう。あのとき、もっと慎重で、思慮深かったら、よかったのに、と思う。
 まっとうな判断力があるなら、えらそうに論評する前に、国民に土下座して、まず謝罪しなくてはならないのはお前だろう、と私は思った。
 このような小さなスタートが、メガ・マシーンを作り出すのだ。組織は一度作ると、その組織の論理で生き残り、巨大化しようとする。東電もそうだ。メール問題でたたかれている九電もそうだ。「メガ・マシーン」とはそういうものだ。
 山県有朋がうらで影響力を及ぼせるようにして作ったといわれる官僚組織。はじめはたいしたことではなかったが、いまや、そのメガ・マシーンが、国民を弾圧し、抑圧しだしている。やらなくてならないことはただ一つ、巨大組織の「ソフト・マシーン」化である。
 福島の人がやっているブログ「象の墓場に象牙はなかった」を見ると、痛ましくてならない。自殺者が2割も増えているとか。
 感受性が麻痺してくると「なに、まだ、2割か」となるが、ここに、すでに「メガ・マシーン」の恐ろしさが隠されているのだ。
 だれの詩だったか記憶していないが、100人の人が死にましたというような言葉に対して、その詩人は拒否反応を示したのだ。そうではない、花子が死んだ、太郎が死んだ、というべきだ。数字でない、記号ではない。花子という尊い命がうばわれたのだ、と。
 物を盗んだら、謝罪し、それを返せばいい。誹謗中傷で人を傷つけたら、発言を撤回し、謝罪すればいい。しかし、人の命を奪ったときには、なにもできない。人の命に関わることは、どんな謝罪も、どんな罪の償いもきかないのだ。

 いま、まさに福島で、それが起きている。先日、二人の子どもの尿から、放射能が検出されたと報道されるが、その子の将来はどうなるのだろうか。東電は、どうするつもりだろうか。中曽根元総理は、その子どもに責任はないのだろうか。
 本当に、ふたりだけなのか。ご両親は心配で、たまらないのではないか。

 ここで、いつもの妄想をすることにする。

 メール問題に手を焼いた社長に、ある人物が悪魔の囁きをする。
「原発、停止を飲んじゃえよ。そして、テレビ局やマスコミに出しているCMをやめて、そのお金を原発反対運動している人々の運動資金として提供するのだ。もちろん、こっそりと、だれが資金提供しているか、わからないようにやるんだぞ。いいな。ただし、電力の独占はどんなことがあっても、手放してはならない。それと、電気料金の自由化が大切だ。」
 社長は、耳を疑った。しかし、やぶれかぶれになってやってみることにした。
 一年が経過したら、信じられないことに、会社始まって以来の、一番儲けることが出来た年になっていたのだ。それも、会社始まって以来の一番働かない年だというのに。
「お金がない人には電気を売らず、お金がある人にだけ売るという方式は、ほんと儲かるものですね」
「だから、いっただろう。だいじょうぶだって。」
「でも、電気がなくて、病院で死んでいる人がいるというニュースを耳にすると、心が痛みます。」
「ものは見方。電気を買える病院では、お金持ちの病人が殺到して、大繁盛だと言うじゃないか。大差ないよ。それよりも社長、いまじゃ、あなたはこの会社を救った救世主だと、社員から言われているそうじゃないですか。よかったですね。では、今月の活動資金をいただきたいと思います。」
 社長は、市民運動家に、分厚い封筒を手渡した。


 なお、この文章は、実在の人物・団体とは一切関係がありません。あくまでも、筆者の頭に浮かんだ妄想にすぎませんので、寛恕のほどを。
 ちょっと、今回の妄想は、やばいかな。

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by spanky2011th | 2011-07-10 15:04 | 世相 妄想随談(音楽付き)